CMが始まり登場するは、
ビートたけし、ラッシャー板前のご両人。


たけしさんが、
本名が『鈴木』姓のラッシャーさんを
「板橋区の鈴木さんです。」
と紹介し、

ラッシャーさんの前には2種類の歯磨きが
並べられています。


ラッシャーさんが
視聴者参加型の番組に出る一般人、
そしてたけしさんがその番組の司会進行係
といった役どころ。



「こちらがいつもの歯磨き、
 こちらがデミュートサンスター。
 どちらを選ぶでしょう。」



たけしさんの問いかけにすかさず、
赤のいつもの歯磨きを選ぼうとする
ラッシャーさん。



するとたけしさんが、
ラッシャーさんの頭にツッコミを入れ、

「パン!」といういい音ともに、
その勢いも相まって
思わず青のデミュートサンスターに
手が向いてしまいます。



無事デミュートサンスターが『選ばれ』、

「デミュートサンスターですね。」
と、したり顔を見せるたけしさんと、

やるせないラッシャーさんの顔を映します。


そして、
「デミュートサンスター」
というサウンドロゴが入りつつ、

“ムシ歯予防の『マジメ』な歯みがき”
というテロップの入った画面に切り替わって
CMは終わっていきます。





このCM、何が素晴らしいかと言うと
面白い内容もさることながら、
テンポが非常に心地良いのです。


『起』:「板橋区の鈴木さんです。」
『承』:「どちらを選ぶでしょう。」
『転』:「パン!」
『結』:「デミュートサンスターですね。」


たけしさんの短い台詞や少ない動作が
お手本のような起承転結を構成しており、

15秒という限られた時間内で
走りすぎることなく、
だからと言って間延びも感じさせない
流れるようなテンポで
起承転結が繋がれていくこのCMは、

見る者に心地良さを感じさせるのです。


あまりに出来過ぎていて、
まるで
「デミュートサンスター」
というサウンドロゴが、
ドリフ大爆笑のオチでかかる音のように
聞こえる程の完成度。


どんな長尺のものにも負けないくらいの
完成された『コント』を、
CMでやってのけたのです。



たった15秒未満で
これほどまで上質なコントを
成立させてしまったたけしさんは
当時37歳。


これからさらに時代を築いていく、
『稀代のコメディアン』の
壮年期の傑作です。