「シンデレラ!このウスノロ!」
「私の部屋もピカピカにするんだよ!」
 
継母や義理の姉たちに虐げられながら、
見すぼらしい格好で掃除をするシンデレラの様子が映されてこのCMは始まります。
 
 
そこへ第三者がその様子を物語として朗読しているかのようなナレーションが入ります。
 
 
「“可哀想なシンデレラは汚い格好のまま、家のなかでずっと働き続けなければなりませんでした。”」
 
 
 
「終わり。」
 
と、物語を唐突に読み終えて
ナレーションの主である少女がパタンと本を閉じます。
 
 
 
屋上に腰を下ろす少女。
 
ここで読書をしているのでしょう。
 
 
 
次の本に手をかけます。
 
「“ある国にとても勇敢な王子様がおりました。”」
 
王子様は悪い魔女に勇敢に立ち向かいますが、
魔女の魔法によってカエルの姿に変えられてしまいます。
 
 
「“王子様はそれから何百年もの間カエルのままでした。”」
 
 
「終わり。」
 
 
またしてもここで物語は閉じられてしまいます。
 
 
 
屋上に吹き寄せる強い風に我が身を突き刺されてるかのような思いを抱きながら
透き通るような空の青さに包まれて、
少女はまた別の本を読み始めます。
 
 
 
「“白くて美しいアヒルの群れのなかで、そのヒナ鳥だけが汚い灰色でした。醜い醜いアヒルの子でした。”」
 
 
「終わり。」
 
 
「終わり。」
 
 
「終わり!」
 
 
 
彼女の心理状態を表しているのか、
先ほどまで感じていた風の強さや空の美しさを感じられない真っ暗な空間のなかで
投げやりに物語を次々に閉じてしまう少女。
 

 
 
そして、
 
思い詰めたかのような表情で、
風の吹き荒ぶ屋上の端部に立つ少女。
 
 
 
すると、
彼女が読んでいた物語の主人公たちが『絶望的な姿』で彼女の前に現れ、
声をかけていきます。
 
 
「最後はどうなるか知ってるでしょ?!」
 
 
「僕は魔法が解けるんだ!」
 
 
「私は王子様と結婚するのよ!」
 
 
 
「お話はこれからなのに!!」
 
 
 
その後、 
 
“人生の素敵なことは、だいたい最後のほうに起こる。”
 
というメッセージが映され、
 
呼びかけられた声が聞こえたか否か、
 
ハッとした表情で振り向く少女の様子が映り、
CMは終わります。
 
 
 
 
「生きるべきだ」
 
「生きなくてはいけない」
 
このような断定的なメッセージを闇雲に発信するでのはなく、
 
「本当のお話はこれから始まるんだよ」
 
と、
最後はハッピーエンドを迎えるおとぎ話の主人公たちが呼びかけてくれるこのCMは、
多くの人の心に優しく手を差し伸べ、支えてきたのではないでしょうか。
 
 
 
やるせないニュースが後を絶たない昨今。
 
 
このメッセージを通して、
自らの人生の物語を途中で閉じてしまうような方が1人でも少なくなってくれれば。
 
 
「お話はこれからなのに。」
 
 
そんなおとぎ話の主人公たちの声が聞こえてくるようです。