まずフランスの音楽院の雇用体制の仕組みなのですが、

日本にはないシステムなので少し説明が難しいのですが

基本的には市が運営、つまり市立の音楽院、そして県立、国立とが大きく分けてあります。

 

その公共機関で働く教員は基本的には公務員のような扱いで

市役所から、つまり税金から給料を頂きます。

 

10年近く前になりますが友人の紹介でパリの当時の自宅から

電車で2時間ほどの場所にある田舎の小さな音楽学校で働くことになりました。

 

色々初めてなこともあり苦労しましたが学校も個人まりとしていて

その分教員同士が身近で校長ともみなが仲良くアットホームな雰囲気の学校でした。

 

生徒とともとてもうまくいっていました。年齢は8歳から60歳まででレベルも初心者から

セミプロまで様々でした。

 

しかし働き始めて3年目に大きく学校の方針が変わることがありました。

個人レッスンからすべて団体レッスンにしましょう!とのことでした。

つまりは1対1ではなく1対2や3にしようということです。

 

これはその学校に関わらずフランス全土で起きた運動で、理由には

文化事業への予算削減など他にも色々と理由があり多くの音楽院が

このような体制を取らざるをえなくなった時期があり現在でもその動きは続いています。

 

ただ私はこの動きに猛反対でした。全員が0の状態の初心者を教えるなら

ともかく上級者を2人などのグループにして教えるなど理解ができませんでした。

 

その方針は校長が決定権を持ちさらに市長が最終的な判断を下します。

 

そのときから学校では毎週のように会議が行われその度に休日でも往復4時間かけて

学校まで行ってました。

 

結果論議を重ねるにつれて私は校長とピリピリとした関係になっていきました。

それまでは本当に友達のように仲良くしていたのですが。

 

そして年度末、忘れもしない7月前半、バカンスに入ってすぐですが

電話がかかってきて『Taiki, ごめん。 来年度は君との契約を更新しないことにした』
、、、、つまり解雇ということです。

 

「いやいやいやいやいやちょっと待て」

 

「色々言いたいけどなぜこんな時期に言う?」

 

「来週から日本に行くの知ってるよね?もう新年度の仕事見つけようとしても募集も公募も殆ど終わってるし仮にあったとしても日本行くから間に合わない。」


などとまあ無限に電話で争ったあげくその学校から去ることを決めました。

 

一番納得いかなかったのはその校長は僕がレッスンしている姿など一度も見たことがないんです。レッスンの能力などは何も評価されず、

自分のやり方に反対されるのが納得がいかなかった、、とはっきり言われたのでもう

諦めました。こんなところではやっていけない。

 

ですが20人ほどいた生徒に誰一人さよならも言えないまま、というのは心残りでした。

 

次の週には教室にあった僕の荷物がすべて速達で送られてきてさすがに少し心が折れました。完全にふられた気分です。

そもそも何一つ悪いことはしていないし外国人としてのハンディキャップもありながら

自分としてはかなり真剣に生徒のことを考えて3年間おくってきたつもりでした。

 

日本でもそのときは9月の半ばまでコンサートなどが入っており帰ってくる頃には

もう新学期が始まっていてどこの学校も公募などしていないといった状況でした。

 

これはまいった。と思い

ありとあらゆる方法で色々な情報を集め

フランス全土、パリ近郊でなくともいいからどこかギターの教員を募集していないか。

9月16日が誕生日でしたが全然めでたい気分にはなれず必死に探した結果

5つほど偶然見つかりました。

 

まず5つに履歴書を送りそして2つから返事が来たので面接に行きました。

他の3つは返事すら来ませんでした。

 

面接、、前の学校は友人の紹介で得た仕事だったので面接などは

ほとんどありませんでした。

 

ですので面接、というのは初めてになりました。日本のようにノックは何回するか決まっていて

お辞儀は何度など決まっているのか。。いやそもそも

日本でも面接なんて経験がない。

 

ともかく友達のフランス人全員に連絡して対策としてどのように話せば良いのか

ということを教えてもらいました。

 

まず、なぜ外国人としての僕を学校が

雇う必要があるのか、というところが当然ポイントとなります。

 

ちなみに演奏技術は全くといって良いほど関係ありません。

フランスは資格社会なので演奏家の資格、というジャンル分けだけで

同じ資格を持っているなら上手であろうが下手であろうがこういった仕事の

審査の場合、地位は同じになります。

 

面接時、

日本とフランスの音楽の教育の相違点、両者の利点を生かして混合させることはできないであろうか。するには具体的にフランス、日本のどこが良くてどこが悪いか、ということをできるだけ明確に長々と説明しました。(とりあえず一杯話した方が良いと聞いていたので)

 

とは言ってもそこでフランス語を間違えては台無しなので口から言葉を発すまでに一度頭で喋ったりすごく文法などには気をつけます。

というより8割は事前に台本を用意して覚えていきました。

 

結果、1つの学校は落ちてもう1つは受かりました。

 

そうやって働き始めたのが今働いているSarcelles音楽院。フランスでも

犯罪率がトップテンに入る地域にあるフランスの郊外に

ある学校です。

 

次回はその音楽院と他にかけもちで働いている学校について、、

 

 

続く。