右ほとけ 左衆生と合わす手の うちぞよゆかしき 南無のひと声
合掌の姿は、私たちはふつう一つしか思い浮かびません。しかし経典によっては12種も示されています。基本的には両手を合わせる姿ですが、こんなに種類があるのかと驚かされます。
あるとき、スポーツの試合終了後、敵味方で両手を高く上げ、相手と掌を合せている光景を見ました。いわゆるハイタッチといわれる姿です。先ほどまで敵味方だったのに、相手を讃えあっている姿です。もしかしたら、これも合掌と言えるのではないかと思いました。
もともと合掌は、人間の中にある神聖な面と不浄な面とを合一したところに、人間の真実のすがたがあるという信仰の現れといわれています。倒したいと願った相手とハイタッチし讃え合える姿こそは、合掌の心といえないでしょうか。さらに、片腕を相手に委ね、和平を求める握手はその最たる姿ではないでしょうか。このようにとらえるとき、合掌とは、自己の内面だけでなく、他者と一つの心になることになります。つまり合掌の姿は安穏なる社会への基本なのです。