年金について考えた時、不安になる方は多いのではないでしょうか?

実際、国民年金の納付期間を現行の60歳から65歳までに延長する案もでています。
自分が年金をどのくらい受け取れるかも分からない中、納付期間の延長は不安要素でしかないですね。

今年は公的年金の財政状況をチェックし、100年後までの給付水準の見通しを示す「財政検証」が行われます。
この「財政検証」で国民年金の納付期間を延長した場合や、在職老齢年金を廃止した場合の影響を試算します。
これからの日本は、少子高齢化によって、年金制度が改正される度に国民負担が増え、給付が減ることは避けられないでしょう。




現在、日本で年金だけで暮らしていける人はどれくらいいますでしょうか?


厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)によると、公的年金を受給している高齢者世帯の中で、公的年金だけで生活している世帯(総所得に占める公的年金の割合が100%の世帯)は44%です。


出典:厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況/Ⅱ 各種世帯の所得等の状況」より


ここからわかる通り高齢者世帯の約4割が、年金だけで生活しているということです。
残りの約6割の世帯は年金だけでは生活できていません。

では、老後の生活費はいくら必要について「夫婦のみの世帯」「単身世帯」に分けて見てみましょう。


▼「夫婦のみの世帯」


出典:総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年平均結果の概要」より


収入を見てみると、実収入24万4580円のうち、社会保障給付(年金など)が21万8441円、その他の収入が2万6139円です。
支出も見てみると、生活費にあたる消費支出が25万959円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万1538円です。差し引きすると、不足分が3万7916円となります。
65歳以上の夫婦世帯の年金受給額は平均で22万円で、生活費は約25万円かかるということです。
年金以外に収入があっても、税金や保険料などの支出を含めると、3万8000円ほど不足します。
ということは、多くの家庭で貯金などを切り崩して不足分を埋めないといけません。



▼「単身世帯」


出典:総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年平均結果の概要」より

収入を見てみると、実収入12万6905円のうち、社会保障給付(年金など)が11万8230円、その他の収入が8675円です。
支出を見てみると、生活費に当たる消費支出が14万5430円、税金や社会保険料などの非消費支出が1万2243円です。差し引きすると、不足分が3万768円となります。
65歳以上の単身世帯の年金受給額は平均で約12万円、生活費は約14万5000円かかるということが分かります。
世帯ごとの平均的な年金額、平均的な生活費でも約3万円も不足しています。

これらのグラフから、高齢夫婦世帯の実支出は28万2497円、高齢単身世帯の実支出は15万7673円ということが分かりました。
税金や社会保険料は年金収入から差し引かれるため、非消費支出も含めた実支出を上回る年金額でないと、年金だけで生活できる状態ではありません。


次に、厚生年金を受給できる人の中で、世帯の平均実支出を受給できる人はどのくらいいるか、単身世帯の実支出をもとに見てみると、
平均年金月額は、男性16万3875円・女性10万4878円・全体14万3973円です。
年金月額を1万円刻みにして階級ごとに割合を表してみます。

・1万円未満:0.38%
・1万円以上〜2万円未満:0.10%
・2万円以上〜3万円未満:0.34%
・3万円以上〜4万円未満:0.59%
・4万円以上〜5万円未満:0.64%
・5万円以上〜6万円未満:0.96%
・6万円以上〜7万円未満:2.57%
・7万円以上〜8万円未満:4.30%
・8万円以上〜9万円未満:5.80%
・9万円以上〜10万円未満:7.03%
・10万円以上〜11万円未満:7.05%
・11万円以上〜12万円未満:6.47%
・12万円以上〜13万円未満:5.91%
・13万円以上〜14万円未満:5.79%
・14万円以上〜15万円未満:5.96%
・15万円以上〜16万円未満:6.21%
・16万円以上〜17万円未満:6.50%
・17万円以上〜18万円未満:6.62%
・18万円以上〜19万円未満:6.32%
・19万円以上〜20万円未満:5.69%
・20万円以上〜21万円未満:4.75%
・21万円以上〜22万円未満:3.56%
・22万円以上〜23万円未満:2.40%
・23万円以上〜24万円未満:1.58%
・24万円以上〜25万円未満:1.04%
・25万円以上〜26万円未満:0.64%
・26万円以上〜27万円未満:0.37%
・27万円以上〜28万円未満:0.21%
・28万円以上〜29万円未満:0.10%
・29万円以上〜30万円未満:0.05%
・30万円以上:0.08%

出典:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より

単身世帯の実支出である15万7673円以上の年金を受給できる人の割合は39.92%と約4割になりました。
最初にお伝えした「国民生活基礎調査」の年金だけで生活している人の割合も約4割でしたので、近い数値になりました。

ここで示した割合は厚生年金を受給できる人の中での割合ですので、自営業者など国民年金のみの人の割合は含みません。
国民年金は満額でも6万8000円(2024年)なので、年金だけで生活できない人の割合はさらに増えることとなるでしょう。


▼まとめ
公的年金だけで生活できる人の割合は約4割。
残りの6割は公的年金だけでは生活できません。
そのため、公的年金以外の個人年金や貯蓄・投資を行なって老後資金を準備しておかないといけない。
いつ働けなくなったとしても、不安がない状態をいかに早く作ることができるかが重要。