
最愛の息子・太一が旅立ったあと、私たちは居間に太一の写真展を作っていました。
そのとき、ある驚くべき事実に気づいたのです。
「私たちの夫婦の記念写真が、たったの1枚もない……!」
実は私たち夫婦は、いわゆる「できちゃった結婚」でした。
当時は親戚の集まりにトラウマがあり、妊娠・結婚・引越しを一度に済ませたくて、一般的な結婚式は挙げなかったのです。
唯一あったのは、よそ行きの妊婦服を着た私と夫が、2人だけで神社で祝詞をあげたときの一枚。
式を終え、神主さんにお願いして、伊勢湾台風を耐え抜いたという「夫婦のご神木」の前で撮ってもらった写真でした。
けれど、たくさんの輝くような太一の写真を見ているうちに、その古い写真の自分が「なんだかダサいよね‼️」と思えてきてしまい、私は勢いでその写真を破り捨ててしまったのです。
あとになって、激しい後悔が襲ってきました。
「どうしてあの大切な写真を破ってしまったんだろう……」
そんなある日、太一を亡くした悲しみを少しでも紛らわせようと、夫と2人で以前から気になっていた川沿いの素敵な結婚式場にある喫茶店へお茶をしに出かけました。
するとそこで、奇跡のようなひらめきが降ってきたのです!
「ねぇ、ここは結婚式場なんだよね‼️写真館もあるよね‼️私たち、結婚式の写真が1枚もないんだから、ここで撮り直したらどうかな?」
私の言葉に、夫は目を輝かせて「それはいいねぇ‼️」と大賛成してくれました。
そこからの夫の行動は本当に素早かったのです。
ただ写真を撮るだけでなく、私の親族、お友達、そして恩師にまで「結婚式を挙げるよ!」と早速連絡を取り、みんなを招待して本当に温かい結婚式をやり直すことになりました。
写真を破いてしまった後悔も、太一を失った深い悲しみも、すべてがこの素晴らしい日のための伏線だったのかもしれません。
太一が空から「お父さん、お母さん、ドレス着てみんなに笑顔になってもらいなよ!」と背中を押してくれたような、最高の結婚式。
あの日の素晴らしい光景と、集まってくれたみんなへの感謝を込めて。