日銀は追加利上げを決定した7月31日の金融政策決定会合の声明文で、実質金利が極めて低い水準にあることを踏まえると、展望リポートで示した経済、物価の見通しが実現していくとすれば「それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく」と表明。一定の間隔で利上げを進めていく構えだ。

Bank of Japan Governor Kazuo Ueda News Conference

会見する植田日銀総裁

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  植田和男総裁は会見で、今年中の追加利上げも排除しないのか、という問いに対し、見通し通りのデータが出てある程度蓄積されれば「当然、次のステップに行く」と述べた。6月会合後の会見でも7月利上げについて、データや情報次第で「当然あり得る話だ」と述べたが、市場はこの言葉を軽視し、直前まで7月利上げの織り込みをちゅうちょした。

  植田総裁は過去2回の利上げ局面で上限となった0.5%の水準を利上げの壁として意識していないとも述べた。東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジストは「会合の声明文も総裁の会見でも連続的な利上げがあると表明しており、タカ派だった」と話し、中短期債ゾーンの利上げ継続への織り込みは不十分だと指摘する。

織り込み不足の理由

  金融市場が日銀の連続利上げを十分織り込んでいない理由について、野村証券の松沢中チーフストラテジストは、植田総裁が中立金利(景気を刺激も冷ましもしない金利)について「言葉を濁している」ことに加え、米国が利下げ局面にあり、「日銀が果たして思い通りに利上げできるか疑っている」ことを挙げる。

  その上で、米国の9月の利下げは濃厚なため、そこを通過して市場が米経済のソフトランディングを確信できたら、日銀の利上げを織り込み始め長期金利は上昇に向かうのではないか、とみている。