22日午前の東京株式市場で日経平均株価は反発し、前引けは前週末比266円62銭(0.72%)高の3万7334円97銭だった。中東情勢を巡るリスク回避の売りが前週末の欧米市場では広がらなかったことを支えに買いが先行した。朝方に上げ幅は一時400円を超えたが、前週に週間で2500円近く下げた後の自律反発狙いの買いにとどまり、その後は下げに転じる場面もあった。中東情勢を巡る不透明感はなおも強いうえ、今週から日米で重要イベントが続くとあって投資家は警戒姿勢を解いていない。

「投資家の警戒レベルは高いままだ」――ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストはこう指摘する。前週末の東京市場を揺るがした中東情勢を巡って、イスラエルによるイラン攻撃の規模は抑制的で衝突拡大の懸念が後退したとの受け止めから欧米市場での影響は限られた。東京市場でもリスク回避の売りが一服して買い戻しが先行したが、地政学リスクの先行きは見通しづらく、積極的な株買いにはつながらなかった。

さらに買いの手が後退している要因が2つある。1つめは半導体関連などハイテク株からの資金流出だ。前週末の米市場ではエヌビディアが10%安と急落した。この日は特に個別の売り材料は指摘されていなかったようだが、1日で時価総額が2000億ドル超吹き飛んだ。米長期金利の上昇でハイテク株への逆風が強まり、ハイテク・グロースの象徴的な銘柄だったエヌビディアの下げが加速している。オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングや台湾積体電路製造(TSMC)が前週に発表した決算を経て半導体関連の業績拡大への過度な期待も剝落しつつある。国内では今週26日に決算発表を控えるアドバンテスト(6857)の株価が下落歩調にあり、決算期待で相場が持ち直す機運は乏しい。

そしてもう1つが日銀が25〜26日に開く金融政策決定会合だ。1ドル=154円台まで円安・ドル高が進み、輸入物価高騰を通じたインフレ加速懸念は足元で強まっている。ニッセイ基礎研の井出氏は「日銀は今会合で追加利上げに向けた地ならしを進めるか、物価見通しの引き上げと追加利上げをセットで出してくるサプライズの可能性も排除できない」とみている。いずれにしても株式市場にとってプラスには作用しにくそうだ。早期の米利下げ期待が後退するなかで、30日〜5月1日には米連邦公開市場委員会(FOMC)も控えている。

5月に向けて「一難去ってもまた一難」となっていきそうな東京市場。日経平均は先週、週間で2000円超下げるなど変動が大きくなっている。決算や日銀会合の結果次第では足元の水準からさらに2000円下げて節目の3万5000円台まで下落する展開も想定しておいた方が良さそうだ。

〔日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥〕