日経平均終値22円安 日銀「はしご外し」に揺れる

 

12日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、終値は前日比22円安の3万8797円だった。朝方に下げ幅は一時500円を超えた。米ハイテク株安や外国為替市場での円高基調という逆風に加え、この日は前日に日銀が株価急落でもETF(上場投資信託)の買い入れを見送ったことが市場参加者の動揺を誘った。日本株市場は、長年相場の下支え役だった日銀からの「独り立ち」の時を迎えつつある。

東京エレクトロンが一時3%安、ソフトバンクグループが同2%安となるなど値がさの主力株が売られ、指数の重荷となった。この日の話題の中心は日銀の「はしご外し」だった。

前日11日は東証株価指数(TOPIX)が午前に2%超下げるなかでもETFの買いを見送ったことが取引終了後に伝わり、投資家の間で驚きが広がった。外資系証券のトレーダーは「肌感覚では、日経平均で100〜200円ほどは日銀が株を買わなかった『がっかり感』で下げている」と表現する。

 

日銀のETF買いへの期待が高かったわけではない。このところの株高で東証プライム市場では売買代金が5兆〜6兆円に達する日も多く、仮に日銀がこれまでと同じ701億円を買い入れていたとしても相場の押し上げ効果はわずかだ。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「ここ3年ほとんど買っておらず、相場へのインパクトは小さい」と指摘する。

それでも市場に動揺が走ったのは、金融政策決定会合を翌週に控えるタイミングでの買い入れ見送りを「引き締め方向の強いメッセージ」と市場が受け止めたためだ。

「既に確実視されているマイナス金利政策の撤廃にあわせ、『年間約12兆円』としているETF買い入れの上限も変えてくるかもしれない」(前出のトレーダー)との警戒感も浮上。市場は新たな不透明要因を抱え込んだ形だ。

日本株は短期的に「内憂外患」の状況にある。これまで日経平均の上昇と軌を一にしてきた米エヌビディア株が11日まで大幅に続落し、日米のハイテク株高に息切れ感が漂う。

国内では年度末に向けて年金基金からの持ち高調整の売りが警戒されるうえ、「月末には上場企業の自社株買い自粛期間に入り、需給の支え役がいなくなる」(明治安田アセットマネジメントの竹田太樹トレーダー)。

 

日経平均は中期トレンドを示す25日移動平均(12日時点で約3万8500円)を下回る場面もあった。みずほ証券の中村克彦マーケットストラテジストは「今後終値で割り込めば、短期的には25日線を上値抵抗として値動きの荒い展開になる可能性がある」と予想する。

とはいえ、長期的な日本株高の局面がこれで途切れたとの見方は現時点では少ない。日銀のETF買いも「売却に踏み切りさえしなければ大きなマイナスではない」(ゴールドマン・サックス証券の石橋隆行ヴァイス・プレジデント)との声が大半だ。ここまでの上昇ピッチが速かった分、目先は多少の値幅調整は避けられないとの声が多い。

(井口耕佑)