タイトル通りの本。
食、という、生きていくのに欠かせない事柄を扱っているだけに、記述内容に目新しさはないものの、これまでの人生で見聞きしてはいても知識としては漠然としていたことを、学問的裏付けがされた専門用語でバシッと言ってもらって自分がちょっとだけ賢くなった気になれる一冊。

人類史、と謳うだけあって、ネアンデルタール人あたりから始まっているのだけど、メインはやはり、現生人類。
採集狩猟生活から、農耕牧畜に移行していったとはいえ、今でも採集狩猟を完全に止めたわけではない、魚介類は天然物を求める人が多いし、ヤマイモや山菜を(採取過程も含めて)好む人も多い、とあり、そりゃそうだと。居酒屋で山菜の天ぷらだのエイヒレだの摘まみながら、「日本人てさ~、農耕民っていうけどさ、こうしてみるとけっこう採集狩猟(漁)民だよね」などといった与太話をすることが多い身としては、発言の根拠を得た思い。
各地の食体系、そして調理の基本である主食とおかずの組み合わせは、「糖質とたんぱく質の同所性」とな。我々の住むモンスーンアジアは「米と魚」または「雑穀と魚」、欧州や西アジアは「ジャガイモとミルク」「麦とミルク」、大西洋岸の欧州は「ジャガイモと魚」、肉食のタブーの強いインドは「雑穀と豆」「米と豆」「雑穀とミルク」だそう。
ジャガイモと魚、まさにフィッシュアンドチップスですな。
一見、無意味な分類みたいだけど、こういうことを頭にいれておくと、各地の食事にたいする理解って絶対違ってくると思う。
ユーラシア各地の食について満遍なく触れていて著者のパワーに圧倒されますが、一番力が入っているのはコムギについてに記述ですね。原産地のカスピ海周辺からどのように伝播していったのか、遊牧民の関与があったのではないか、とか。コムギの種類の説明も力が入っています。
食に拘りのある方、旅行好きの方にはおすすめです。