昭和50年代にデビューした彼女の歌声は、アイドル全盛時代の中、ポップス界のみならず歌謡界にも衝撃を与えた。スラリとした姿で、若いながらも落ち着いた声質と低めのアルトの音域で歌い上げる。昭和の若い女性の目線で、恋愛や同世代の女性たちを元気づける歌などを多く歌った彼女は、一世を風靡した。
20代で、若くしてポップス界のトップランナーに躍り出た山下達郎と結婚をする。当時から現代最高のコンポーザーとしても活躍していた山地達郎に、彼女は自分で作った曲を聴いてもらったという。山下達郎は彼女の才能に驚き、その後、彼女の曲作りにコンポーザーとして、そしてバックコーラスとして協力する。こうして彼女は、自ら作詞作曲を手がけるシンガーソングライターとして活動の幅を広げてゆく。
印象に残っている曲は4曲ある。
違う女性の元へと去って行った彼を偶然見かけて、思いを断ち切れない女心を歌った『駅』。
別れた彼からの突然の電話と好きという言葉に心を揺さぶられながら、何とか今を大切にしなければと気持ちを抑える女性の心を歌った『告白』。
別の女性を選んだ彼が、時を経て別れたという噂を耳にして、昔には戻れないことを感じながらも揺れ動く女性の心情を歌った『シングルアゲイン』。
妻のいる男性との逢瀬に疲れながら、新しい道を進めれば明るい世界が広がるのにと思い悩む女性を歌った『マンハッタン・キス』。
女性の悲しい恋の結末を細やかに、日常的な言葉で綴る彼女の歌詞はどれも切ない。
そんな彼女が、2012年に新曲をリリースした。『いのちの歌』である。
この歌は、連綿と続く生命の連鎖の中、ほんの一瞬、自分と家族を切り取って歌う、優しくも切ない壮大な『いのち』の抒情歌である。彼女の詩の柔らかさと落ち着いた歌声で聴くこの曲は、世の中の『いのち』全てに愛情を注いでいるようにさえ感じられる。
両親と自分、自分と子供だけでなく、永遠に続く、時を超えた『いのち』の物語をぜひお聴きください。