映画界でMr.アメリカと呼ばれたロバート・レッドフォードが9月16日に89歳で亡くなった。いつかは訪れる瞬間なのに、やはり寂しい気持ちに襲われる。
僕は小学生の高学年から洋画を見始め、日曜日は毎週の様にひとりで映画館に通った。そんな生活は何年も続き、数え切れない本数の映画を観た。そして、最も観たハリウッドスターがロバート・レッドフォードかも知れない。
ポール・ニューマンとキャサリン・ロスと共演した『明日に向かって撃て』では実在した列車強盗を演じ、暴力的な部分以外をお茶目に描くと言う新しいスタイルの西部劇を観せてくれた。
再びポール・ニューマンと共演した『スティング』では2人の詐欺師がギャングを相手に一世一代の騙しを仕掛ける。物語の中のどこまでが真実でどこからがフェイクなのかが最後まで分からず、ラストのどんでん返しには驚かされた。
他にも、バーバラ・ストライザンドと共演した『追憶』、組織内部の陰謀を知り告発しようと一人立ち向かうCIA職員を演じた『コンドル』、フィッツジェラルド原作で上流階級の驕りと没落を描く『華麗なるギャツビー』、名優メリル・ストリープと共演した『愛と悲しみの果て』など。
後に監督に転身し、第一作『普通の人々(オーディナリー・ピープル)』で、何とアカデミー賞の作品賞や監督賞を受賞した。この映画で、正に普通の少年を演じた新人ティモシー・ハットンを起用し、彼はスクリーンデビュー作で助演男優賞を獲得した。
そして、『モンタナの風に抱かれて』では自らもカウボーイ役を演じ、事故に遭った少女と愛馬の再生の物語を静かに描いた。秀作である。
書いていて、ものすごく映画を観たくなって来た。彼の映画のみならず、昔のハリウッド映画を。今はCGとアニメーション合成が当たり前だが、それ以前の、人が人を演じて心の動きで感動させてくれる本物の映画を。
心よりご冥福をお祈りいたします。