NHKの朝ドラで、太平洋戦争が終戦を迎え、主人公ののぶは欺瞞を感じたまま教え続けることができず、教師を辞めた。戦時下では教育のみならず、『隣組(となりぐみ)』と言われた町内自治組織も強権を振るうなど、生活現場全てが異常だった。


 僕は叔父からこんな話を聞いた。旧制中学時代、お国のために死ぬのは立派な事だとか、お国のために戦う兵隊さんに恥じない様に強くなれと、日々生徒達を叱咤し体罰を中心とした暴力的指導が横行していた。ところがそういった教師が、終戦と同時に手のひらを返した様に自由と平和を尊重する側に回ったと。そして、なんだか生徒達に媚びる様な姿にも見えたと。


 戦時下では言いたいことを言えず、みんな同じ方向を向いているかの様に振る舞わなければいけない。いくら自由が一番大切だと思っていてもそういう行動はできず、好きなジャズを聴きたいと思っていても聴くことはできない。

 『世間』に合わせるのはやむを得ないことだ。自由を叫べは憲兵に引っ張られる。教師は飛ばされる。徴兵に反対すれば逮捕される。そして、『隣組』の活動参加に消極的であれば村八分にされる。そう言った『強権』を正義だとして振りかざす人たちが横行するからだ。

 彼ら彼女らは、終戦後の一瞬、周囲の目を気にして大人しくなるかも知れない。今までの行動や言動に触れられない様に、周囲に異様なまでに優しく接するかも知れない。


 こう言った行動は、実は戦時下だけに起きるものでは無く、現代生活でも起きている。ママ友の中のやたらと強いボス的存在だったり、会社の中の立場を利用して行われるパワハラだったり。本質は、自分は強いと感じたいとか自分が一番でありたいと思う我欲に過ぎない。


 僕はこう言った言動や振る舞いができない、優しい人に惹かれる。以前にも書いたが、優しいことが一番の強さだと思っている。


 自分を振り返り、反省して離職したのぶにエールを送りたい。