キルティング布をミシン掛けした遮光用のフードをインコのピコちゃんの鳥籠に被せようとして、いつもの様に声をかけた。

「また遅くなっちゃったね。いつもごめんね」

 ひととき目を合わせて、フードを被せてゆく。フードと鳥籠が少しだけ擦れる。カサカサ。カチコチ。カタカタ。微かに音を立てて、鳥籠をそおっと包み込む。

 これから片付けをしなきゃいけないな。食器だけ洗おうか。切れ目から出ている持ち手に手を掛けてゆっくりと持ち上げる。ピコちゃんが目を回さないように隣の寝室に移動する。ここなら大丈夫。フードで暗くして電気を消して。寝室に置いてあげれば、洗い物の騒々しさも届かない。

「ちょっとだけ待っててね」

 気持ちのこもったひそひそ声でピコちゃんに伝えて、台所に戻った。


 洗い物を終えてあれやこれやを済ませて寝室に入ると、やけに静かに感じる。長さ50センチ位の壁掛けの振り子時計がカチッカチッと鳴っている。大きくもないし、ノッポでもないし、古時計でもない私のお気に入りは、電池の力で振り子を揺らす。


 布団にくるまって、しばらくの間、耳を澄ます。もしもピコちゃんが眠っていなければ、時折小さく身震いをして、チッと泣くかも知れない。


 お気に入りの時計が規則正しくカチッカチッと時を刻む。


 静かに夜が更けてゆく。