5年ほど前、多分小樽だったと思うのだが、オルゴール堂を訪れた。大小様々なオルゴールで溢れ、時折、試し聞きの複数の曲がまるで重奏の様に耳に届く。2階は可愛らしい工芸品や、木片から愛らしい鳥の姿を削りだすカービングなどが飾られ、音ではない目で見て愛でる品物が所狭しと並ぶ。

 そんな2階の一角で、陳列しているパイプを見つけた。荒削りの木のパイプが5〜6本。そこだけが『可愛い』から切り離された景色だった。


 父は英語塾を営みながら、割と時間のある昼下がりにはよくパイプを燻(くゆ)らせた。パイプから漂う香りは子供にとっても甘く華やかに感じられ、父に今日の葉っぱは昨日と違うんじゃないのと聞くこともあったくらい、その香りは様々だった。品種、染み込ませるプランデーや香料の違いによって部屋の香りが変わる。

 僕が中心街に友達と自転車で遊びに出かける時、これとこれを買って来てとメモを渡されてお使いも頼まれた。父はダンヒルを好んだ。


 何か物や事柄に触れた時、まるで人差し指の先で水面に触れて波紋が広がるかの様に、思い出が次から次へと溢れ出ることがある。


 そんな思いに誘発されて、昨年10月に投稿した『絵のない絵本』の様な小片の『ものがたり』です。


 『木のものがたり』。


 https://ameblo.jp/tahbou-note/entry-12872663773.html


 よろしければ。