以前にも少し書いたが、僕は洋画が大好きだった。父に初めて映画館に連れられて西部劇を観たのが小学4年生だっただろうか。当時は映像と字幕の両方を追うことが難しくて、楽しむ事はできなかった。その字幕の字体はといえば、手書きのガリ版文字みたいで、少し斜めになっていとこともあり、かなり読みづらかった。


 それでも、月曜ロードショーや中学に入ってからの水曜ロードショーなどで映画に親しみ、中学2年に洋画系の映画館の会員になった。うろ覚えだが、月800円の会費で、通常1200円の映画を500円で観る事ができた。少ない時で月2回、多い時は月4回で、当時は一本のみ上映するロードショーは滅多になかったので、月4本〜8本観たことになる。

 今はもう無いその映画館、青森市の銀英会館には『みゆき座』、『ミラノ座』とふたつのスクリーンがあったので、よほどのロングランでもなければ2週間の上映期間が終わって次の映画が掛かるので、ほぼほぼ月に4幕、8本の映画を見る事ができた。そして気になるパンフレットも買った。

 映画雑誌も、刊行されていた二大月刊誌『ロードショー』と『スクリーン』を毎月買って銀幕スターのあれやこれやに目を輝かせた。特に主演女優達は輝いていた。

 当然、映画音楽にもはまり、NHKのFMラジオで映画音楽特集があると、放送時間の長さに合わせてカセットテープを用意して、できるだけナレーションを飛ばして曲だけを録音した。そのため、2時間カセットレコーダーに張り付いているなんて事はザラだった。


 映画に対する熱はその後も冷める事なく続いたものの、お金がかかる事もあり銀英会館の会員をやめ、映画雑誌は『スクリーン』だけになり、見る本数も減っていった。僕にとって、映画は小説本と同様に知らない世界に触れ、自分じゃない誰かの人生を追体験できる機会を与えてくれる、謂わば心の教本だ。


 大好きな映画は数々あるが、今も心に強く残る作品は、モーガン・フリーマン主演の『ドライビング・ミス・デイジー』と、ヘンリー・フォンダ主演の『黄昏』だろうか。


 水野晴郎さんの『映画って本当に良いものですね』の言葉が忘れられない。