今、6/13公開の映画『フロントライン』が話題だ。主演は小栗旬君で、新型コロナウイルスの集団感染が起きたダイヤモンドプリンセス号での、未知のウイルスと戦うDMATに参加した医師たちや看護師たちの奮闘と葛藤を描く。
この映画で描かれるのは、ウイルスを撃退して全員の下船を完了させたヒーローものとしての側面だけでは無い。敵は未知のウイルスであり目には見えない。当然、現場に接した人は感染している可能性があり、その恐怖から差別と誹謗中傷が始まる。
先程放送されたNHKニュースの中の特集では、DMATに参加した看護師の子供を保育園に通院させるなと保護者から抗議があったと言う。またある病院では、看護師が参加した病院にはもう行かないと嫌がらせの電話があったなど、一例が挙げられていた。
「またか」と思った。
14年前の東日本大震災の巨大津波に襲われて、福島第一原子力発電所で電源喪失しメルトダウンが起きた。放射線被害から逃げるため、近隣住民たちの多くが、知り合いや親戚を頼ってより安心できる他県に逃れた。すると、福島ナンバーが来たと監視の目が光り、福島に帰れと紙を貼られたり電話で嫌がらせをされたりした。
僕はこういった一連の嫌がらせに辟易する。知識の無さと根拠の無い誹謗中傷。ましてや、行き場を失った人たちにどうしてそんな事が言えるのか。突然の事故に遭い家を失った人達を支えてあげようという気持ちにどうしてなれないのか。自分がもしそうなったらと考えられないのか。
ダイヤモンドプリンセス号での集団感染が起きた時に僕が願ったのは、もはや陽性にはなり得ないセーフティラインを確立して下船をさせて欲しいと言うことだけだった。担当した医師や看護師には敬意しか無かった。
娘も、コロナ病棟の専従医師では無かったものの、コロナ病棟の患者を診る機会があった。当然、同僚の医師の中には稀に感染する人もいた。そして何と、コロナ病棟に専従する医師や看護師たちは、同じ様な誹謗中傷を受けていた。本当に人として恥ずかしい行為だ。医師や看護師は命を守る為に活動しているだけなのに。
有史以来、様々な差別が起きてきた。魔女狩りにペスト難民。関東大震災後の他県からの来訪者を排斥しようとする動き。
僕は絶対にそちら側の人間には成りたく無いと思う。いや、決してならないと誓う。