今夜も雨が降っている。風があまり無いので、花散らしの雨ではなさそうだ。少し前にも書いたが、僕は雨は嫌いじゃない。無論、晴れた日は行動の範囲が広がりそうで胸がわくわくするが、雨の日は、特に雨の夜に訪れる静かな時間が好きだ。
大好きなオフコースの歌で、『雨の降る日に』と言うバラードがある。雨の日に好きな人を思う青年の気持ちを小田和正さんが静かに歌い上げる。曲の始めに、雨の中を車が走りすぎる効果音が入り、ピアノのイントロが流れる。聴き終わると、赤い傘を差した女性の後ろ向きのシルエットが心に焼き付く。
この曲は、1975年に発売されたアルバム『ワインの匂い』のA面の一曲目に収録されている。雨の音と香りが漂う切ない曲で始まるこのアルバムは僕の中でオフコースの珠玉の一枚だ。
女性との日々に思いを馳せつつもやるせなさを感じている心を歌う『倖せなんて』。心を寄せる女性にやっとのことで思いを伝える若者と女性の揺れる気持ちを歌った『ワインの匂い』。B面の最後には、若き日に好きだった女性に思いを馳せ、どうしようもない時間の隔たりと老いても尚残る「好き」と言う気持ちを包み込む『老人のつぶやき』。
このアルバムには、亡き西城秀樹さんも歌って大ヒットを記録した『眠れぬ夜』も収録されている。しかし僕の中では、切ない曲の数々が煌(きら)めいて、残念ながらこの曲は霞んでしまう。
機会があったら、是非とも聞いて欲しいと心から思う。