野球といえばジャイアンツだった。青森県に住んでいると、中央局の放送を見るしかなく、全国的に人気のあるジャイアンツはいつも放送されていた。まさしく、『巨人・大鵬・卵焼き』だった。

 20年ほど前、楽天球団が仙台を本拠地として誕生し、楽天を応援するようになった。震災の後の嶋捕手の「見せましょう。東北の底力を」と言う言葉と、マー君が〆て日本一になった瞬間の興奮が忘れられない。


 昨年途中からは、世界一の野球選手と言われる大谷翔平君を追いかけて、ドジャースの試合をテレビで観戦するようになった。そして、以前から報道されていたことだが、改めて大谷君の一つ一つの行動、しぐさ、表情に礼儀正しさが溢れていると強く感じている。

 力と力のぶつかり合いであり、ある意味体格スポーツ、パワースポーツでもある野球の世界では、外国人選手の力を誇示するかのような動きやしぐさが目につく。ホームランを打った時や三振をきっした時などに放り投げられるバット。歩き去りながら悔しげに何度もピッチャーを睨みつける。フライを捕球しながらガムを膨らませるなんてことも。観ていてうんざりする。

 一方の大谷選手は、ヒットを打って駆け出す時もバットをそっと置くかのように手放す。ホームランの時もそうだ。三振に倒れた時は歯を食いしばって悔しさを抑えて打席を去る。第一打席では、相手ベンチに敬意を表して帽子のつばに触れながら会釈する。ファールボールが相手ベンチの方向に飛んだ時には咄嗟に手のひらをかざしていたわる様な詫びる様な仕草をする。フォアボールで一塁に向かう前には、バットと装具をボールボーイに渡して最後にそっと肩に手を添えてねぎらう。

 本当に枚挙にいとまがない。


 僕は常々、強い人とは、喧嘩が強い事でも強い言葉で人の上に立つ人でもなく、他者を思いやり、守り、自分を律する事ができる人だと思っている。


 僕の思いを世界中で最も体現してくれているのが、大谷翔平という人物である。