先日とある番組で、2016年に起きたバングラデシュ中央銀行が8100万ドルの不正送金被害にあった事件を取り上げていた。現在の為替レートでおよそ130億円の巨額窃盗事件だ。
実行犯は北朝鮮の朝鮮人民軍系ハッカー集団『ラザルス』。僕が最初に『ラザルス』の犯行に触れたのは2014年のソニー・ピクチャーズの個人情報を含む大量の情報流出だった。今明らかになっている彼らの犯罪の端緒は2007年で、当初は韓国政府に対するもので、次第に米韓のWebサイトへの攻撃へと移ってゆく。例えば日韓の共同軍事演習に対しての嫌がらせみたいな行為だった。
次第にその目的は資金調達へと移っていく。マルウェアを仕込み、IDやパスワードを盗み取り、より上部のシステムに入り込み、やがてビットコインだったり口座資金だったりを盗み出す。よくある手口だが、ひっそりと継続的に仕掛けていく執念を感じさせる。
そうやって集められたビットコインなどの仮想通貨を含む外貨は、自国経済がどのような状態にあろうと世界から物品の調達が可能になることを表す。主に軍事面に使われていると思われがちだが、その潤いを以(もっ)てして政府運営や人件費に回せるお金が増えるとも捉えることができよう。
自国の生き残りのために積極的に犯罪を犯し、ウクライナ進行では兵士一人あたりの派兵金は30万円で、死亡に対してはそれ以上の金額がロシアから支払われる。しかし、北朝鮮兵士の家族はそもそもロシアへの派兵を切らない。お金は全て国家に吸い取られるのではないかとの声もある。
世界を股にかけた犯罪を仕掛けて金銭を盗み取る国家。戦場をマーケットとして、兵士の命の代償が国家の生きる糧となる。
恥ずかしいとしか言いようがない。