興味深いニュースが飛び込んできた。NASAが、小惑星ベンヌから回収した岩石と塵の中に、タンパク質を構成するアミノ酸が見つかったというのだ。その数は14種類で、生命誕生の起爆剤が地球以外にあったことを示すものかもしれないと注目されている。


 『原始地球の濃密な大気と大海原、そして雨と雷』が荒れ狂う環境で、生命に必要なアミノ酸が生成されたと、大昔に習った。研究は進み、近年、太古の地球に似せた環境で強力な放電をする実験で、数種類のアミノ酸の生成が確認された。

 僕は、この実験研究の成果をもってして、生命誕生のプロローグの解明が進むと思っていた。いわば、地球完結型のゼロからの生命誕生ストーリーである。

 ところが、タンパク質の基となるアミノ酸が小惑星に存在するとなれば話は変わってくる。しかも、小惑星ペンヌは太陽系が形成された当初の45億年前から存在するとされている。宇宙空間には太古の海もなければ濃密な空気も雷も存在しない。どうして小惑星でと思ってしまうのは仕方のないことだろう。


 岩石採取のターゲットとなる小惑星は、地球に近づいたり離れたりを繰り返す軌道周期を持ったものに限られる、太陽系に含まれる天体である。小惑星ペンヌだけに唯一アミノ酸が存在するということはあり得ない。言い換えれば、沢山の小惑星にアミノ酸が存在するはずだ。

 地球の生命誕生の起源は、先ほど述べたアミノ酸の地球起源説(原始雷説)の他に、太陽系内起源説が以前からあった。地球は、あまたある小惑星が衝突を繰り返して、さらにその自重(引力)で多くの小惑星を取り込み大きくなっていき、その際の小惑星に存在するアミノ酸が起源となったという説である。

 しかし、この発見をもってして、地球の生命の起源が地球外だとは断定できるものではない。さらなる研究と思索が必要だ。


 新しい発見には驚くが、また新たな疑問が生じていく。


 小惑星のアミノ酸はどうやってできたのだろうか。