僕の青春の中で欠かせない存在がバイクだった。大学にも通い、遊びにも行き、あちこち飛び回るバイトでもバイクに跨(またが)って県内くまなく走ったものだ。


 しかし、雪国では一年中バイクに乗ることは出来ない。高校の頃、少し雪が降ったくらいなら自転車で通学したものだが、スピードの出るバイクだとそうは行かない。一度、雪が降る前のキリリと寒い日の朝、大きな交差点で前輪が滑って転倒したことがある。

 冬、バイクは物置にはしまわなかった。部屋を片付けて、何とバイクを自分の部屋に置いて冬を越した。昔々、ビールは酒屋さんから配達してもらっていた。そのビールケースに空き瓶を入れて酒屋に返すのだが、なぜか空のビールケースが3ケースほど物置に置かれていた。そのビールケースにエンジンを乗せるイメージで架台として使い、両方のタイヤを浮かせて置いた。間にクッション代わりの座布団を挟んで。


 大好きなバイクを部屋に置き、雪解けを待つ。結構幸せな時間だった。