小学校に上がって、初めて薪ストーブを見た。冬になると、黒く塗られた、小さな子供からするとまるで蒸気機関車の様な佇まいで、教室の真ん中に置かれた。家では石油ストーブだったので、最初は本当に驚いた。


 冬支度は、まずはストーブと煙突の据え付けから始まる。太い『U』の字状に、教卓に向いて口を開ける様に子供達の机を並べ直して、真ん中にストーブが置かれる。

 同時に薪の準備も始まる。生徒が列をなして薪置き場から運び、廊下に積んでゆく。外窓側の4〜50cmを使って、並んだ教室の幅を長く縦断して、1m以上の高さで綺麗に積んでゆく。おそらくは、1、2年生はまだ運ばなかったのではないかと思う。

 薪は校務員のおじさんが割って準備してくれてたのではないだろうか。小学生の時、薪を割った記憶はない。


 ストーブの熱は近くで熱く、遠ざかると届かなくなる。教室を暖めると、ストーブの近くの席の子たちは、いつも顔を赤くして授業を受けていた。

 中学校では薪割りを手伝った。各クラス持ち回りで、1クラスから男子3〜4人で。大きな薪小屋の中で割った薪は、放り上げられて山積みになってゆく。

 いい経験をしたと思う。小、中学校の薪運びや薪割りもそうだが、昔は大人だけで手が足りなければ、子供たちも手伝うのは当たり前だった。なにしろ馬鹿にならない人数なのだから。


 そういえば、中学では給食が無かったために、お昼持参だったが、そんな中でのエピソード。持ってきたお弁当は冷めていると美味しさが半減してしまう。で、薪ストーブの周りに生徒が座る椅子を2、3脚並べて、熱が当たる位置に並べて置くのである。

 ところがある日、4時間目の授業で教室に入ってきた先生がみんなを見渡してひと言!


「だいだ〜?べんとさたぐあんへできたの〜」


注 『だいだ』→『誰だ』

  『べんと』→『弁当』

  『たぐあん』→『たくあん』

  『へで』→『入れて』   津軽弁です