昨日、秋田県鹿角市の道の駅で『ババヘラアイス』味のポテトチップスを発見。あまりの驚きに、少し離れたところで旅のお土産を選んでいた妻を呼ぶ始末。本当にびっくり。

 『ババヘラアイス』とは、屋台(リヤカー)を引いてアイスを販売する引き売りのこと。青森県の津軽地方や秋田県でそう呼び習わされてきた。『パパ』が『ヘラ』ですくった『アイス』の事。

 昔は、公園や海水浴場、果ては地域の小中学校の運動会にまで、屋台を引いて出張り、親しまれていた。


 僕が子供の頃、白と緑の二色だったように思う。時を経てピンクやチョコ色、黄色までバリエーションが増えていった。売り子のおばさん達は、子供たちの「チョコ!」とか「イチゴとチョコ!」などの様々なリクエストに答えながら、器用にあっという間にアイスを仕上げていく。片手にコーンを三つ持ち、三つ仕上がるとそれぞれを子供達に渡す。屋台には行列ができ、その作業を延々と繰り返す。

 僕が初めて買った時は50円だっただろうか。中学か高校か、ふと気づくと100円に値上がりしていた。親たちはプープー言いながらもお金を渡してくれた。行楽には欠かせない味なのだから。


 僕が住む青森市では『チリンチリンアイス』とか『カランカランアイス』などと呼んでいた。町中を縦横に引いて歩き、リヤカーの持ち手に付けた大きめの鈴を、引き手を持ったまま指で揺らしてカランカランと音を鳴らす。

 その音に気づいた子供たちの反応は素早い。僕は、母に「早ぐ!居ねぐなってまる!」と小銭をねだる。母も慣れたもので、まいかげ(前掛け、エプロン)で濡れた手をさっと拭いてから小銭を出し、「四つ買いへ!(買いなさい!)」と言って僕に渡す。横に待機している姉と共に玄関を駆け出してゆく。


 引き売りはアイスの他にも焼き芋、豆腐などなど。


 時代が下ると、軽自動車を使って、より高域に、重さのあるものの販売も始まる。

 朝採りのしじみ貝は丼か家事用のボールを抱えて。おじさんは必ず「砂ぬぎせよ!(砂抜きしなさい!)」と言葉を添える。

 夏はスイカとプリンスメロン。こちらは母が出て行って目利き。

 そして夜泣き中華。その場で食べてもよし、丼持参で家で食べてもよし。

 これら車による移動販売が発展して、必然的に地域の移動スーパーになって行ったのではないかとも思う。


 今はチリンチリンアイスの売り手も激減して、滅多に見かける事もなくなり、寂しい限り。

 リヤカーの引き売りに限らず、いずれ消えゆく文化も当然ある。200メートル間隔でコンビニがある便利な時代なのだから。