「・・・おまえが出た後、姫様が入ってきて、姉さんとだけで話をしたんだ、話が終わって姫様はすぐいなくなった、姉さんはケイトを連れてアケに帰ると言い出して・・・、私には何もわからない、でも姉さんの言うことは絶対だから仕方なくて・・・、」
アマンダの話は、ケイト死後に移行する。
悪魔対戦を放棄した形でアケ村に帰されたことを不服そうに話した。
そしてその真相を何も知らない、・・・やっぱりおまえは、(俺もだけど)外されるんだなぁ、とまた思った。
・・・ケイトをアケに連れ帰ってからの話はなかった。
アマンダは宙の何かに気を取られたような眼で言った。
「物心ついた時からケイトがいた。一番近くでずっと見てきたからケイトの戦いはよくわかっている、・・・納得いくまで光を出し尽くて終わったのならよかったんだ、これで。・・・後は繋ぐ、ケイトがたどり着けなかった場所は、私が行く。私たちは同じ使命を負う者だ。・・・だから私も自身の光を極限まで追い、戦う。」
「・・・・。」
ケイトの想いは、俺にも繋がっている、だから今ここにいるんだ。
でも・・・、アマンダは生かそうとしたんじゃないか?
「最後まで姉の真似はしなくていい、生きて戻れよ、男が待ってんだろ。ローレアはおまえにだけ石を取ってきたんだ、おまえには未来があるってことなんだ。」俺は言った。
アマンダはまたムキになりそうだったが、意外と冷静に言葉を返してきた。
「・・・姉さんじゃない、姫様なんだ、私とカイの石を取ってくるように命じたのは・・・、」
「・・・アシュリーが?」
「ありがたい話だけれど・・・。」
みんな知ってたんだ、サングレ行きの本当の目的・・・、俺だけ踊らされていたって話。
セスアシュリーに視線を移す、・・・ハッとして、油断してはいけない!
「おい、アマンダ見ろ・・、」
だらしなく崩れた寝顔が大変なことになった。その顔の一部分が溶けて、セス本来の顔が死人のように浮き出ている。
アマンダは慌ててサッと手をセスの顔の前にあて、もとに戻した。
「まだまだだな、未熟者。」遠慮なく言う。
「おまえは、文句ばかりだ・・・。」アマンダはブスッとして背を向けた。
・・・それから、少しだけ眠りについた。
東の空の雲間から薄く仄かな青光が、帯状に浮かび上がる。
そろそろか・・・? 眼を覚まし、気を引き締める。
サングレの森は、朝の光が差しても薄暗く侘しい風景だろう。
空を覆う黒雲が晴れることはないんだ・・・、
それでも、僅かな光をたどり引き寄せる、 ・・・勝つために!
突然、静かな森の景色を映していた結界壁に、動物の顔を崩したような不気味で大きな顔がにゅっとのぞきこんで・・・!
・・・、結界がピシっと音を立てる!
・・さらに、ピキピキッ・・と、立て続けに音が・・・、一匹ではない、数匹のそれが代わる代わるおぞましい顔を結界壁の上や横から覗かせている・・・!
「だいぶ集まったようだな・・・。」アマンダが呟いた。
・・・・、そう、結界の外では無数の悪魔が・・・、
「・・・いよいよ、か。」「ああ・・、」
壁にへばりつくように、・・・押し合い、蠢き・・・、
「ヘッ、ヘッ、ヘッ・・・、」と謎の乱れ呼吸まで聴こえてきた。
「気持ち悪いな・・・、」別の意味で寒気を感じ、ゾクッとする。
「おとりの役目は十分だ。」アマンダがニヤリとした。
「そうか、・・・意外に子供臭くてもよかったんだな・・、」
俺も不敵に笑う。
「・・・だったらさ、ローレアとケイトなら、この3倍はいくんじゃないか?」しつこく言い足す。
「フン、言ってろ。」 「ま、頑張るか。」
二人がそれぞれ剣に手をかけ・・・、
・・・そしてバシャンッ! と不思議な音で結界が破れた!
一瞬だけ、暁光が眩しさを増す・・・、
身構えた俺とアマンダの剣が、その光を受けて煌々と輝いた!
<3の1>
朝の薄明りの中、視界を埋める黒い影。
それは千を超える種々の悪魔たち。
結界破壊と同時に輝いた剣が、寄ってきたソレらを数十メートル向こうまで吹っ飛ばした。
抱えたセスアシュリーが眼を覚ます。
・・・おお、これがこの状況にパニックを起こして自分が何者になったかなんて忘れて、「ワァァーッ!!」と地声で悲鳴を上げたら? 眠らせた方がいい!
と焦ったら、声を出さず地面に降りて俺の背後に回った。・・・よしっ!!
「アシュリー、俺から離れるなよ、・・。」
普段のように声掛けしてチラッと見れば、グッと眼を開けて、鼻穴を大きく広げピックピックさせてる気張った顔・・・、
こんな顔、絶対アシュリーじゃないし、本当にやめてもらいたい。
飛ばされた悪魔が、ジワリジワリ寄ってきた・・・、
・・・ヒカリノ、オンナ、ダ、・・・オンナヲ、トラエヨ、・・・主サマガ、マチカネテイル。
・・・オンナヲトラエヨ、ト・・・、トラエヨ、ト、・・エヨ・・ト・・。
束になって悪魔が迫った!
アマンダは飛び上がり空から・・、俺は地から・・、
・・・まとめて悪魔を斬る!!
俺の剣も4,5人単位で悪魔を捉える。
アマンダの斬った100近い悪魔は、雲散霧消し跡形もなくなるが、俺が斬ったソレは今まで通り元に戻った姿で息絶えていた。
地に降りたアマンダと俺は背中合わせになる・・、セスアシュリーを間に挟んで、
・・・ついに、戦闘開始だ!!
王の剣は光ったりしない。ただの鉄のブロードソードだ。見た目よりずっと重かった。・・・それが俺の気力が剣にのり、敵を斃していくうちに軽くなってスイスイと振れてくる。
光らない俺の方に大量の悪魔が寄ってくるので、そこをズバズバッと斬ってやった。
その斬りやすさは、柔らかい骨なし動物を斬っているような感覚だった。
しかし斬り損ねた悪魔が捨て身で俺に体当たりしてくるので、それで服は溶け皮膚に黒い傷がつく。
セスアシュリーは何とか守るが、おのれェ、俺の美肌を! と怒りを爆発、剣の動きを速めて何度も連続10斬りを成功させる。・・辺りはその死骸に埋め尽くされた。
鳥や野獣・・、人もいた。 ・・しかし、後ろは見ず前に向く!
この剣には強い意志がある。・・・悪魔を完全消滅させる・・!
その重みを抱え、戦う・・・!!
ピンチが来る! 木々に隠れていた悪魔が大量の悪魔突如現れ俺とセスアシュリーに飛びついた!
大剣が間に合わず視界が真っ黒になる。・・・しかしアマンダだ、咄嗟に閃光を悪魔に向けて投げた!・・・や、助かったが・・・、
「自分のことは何とかする、・・・無駄に魔法は使うな!」
「偉そうにいうな!・・・憑依されかけたくせに!」
「心配いらん! 俺は強くなったんだ、マヒナ島の時と違う!」
「・・・少しは認めてやるけど。」
「・・・う~、とにかく目上の者の言うことは聞け!」
「戦いに関しては私が上だ!」
「・・・・。」
しかし毎度ながら、弱輩悪魔の群れがその数だけには恐れ入る、斬っても斬っても地の底から湧いてくる感じが果てしない。
全滅は無理かも・・、どこかで切らなければ・・・、
「ジクトこっちだ・・!」
アマンダが気配を察知して走る。「ヤツの息遣いを感じる・・・、近いぞ・・・!」
セスアシュリーは俺の背で服をがっちり握りしめ、俺の動きに振り回されながらもついていたが、俺が走り出すと手が離れ地面に倒れそうになった、そこを左腕で拾い上げ前で抱える。
まだ怖いのか、俺の首に手を回しギュとした。意外な女の動きに体の反応は、・・ない。
猿を抱えている気分で、アマンダの後を追いかける!
走りながら吸い付くように襲い掛かかってくる悪魔を、・・・斬って、斬って、斬りまくった!
もっと使いこなせたら、その威力はさらに上がる、・・・もっと速く、もっと強く・・・!
俺も極限を・・・、追う!!
アマンダもブレスレットなしとは思えない神業剣を見せ敵を凪倒していく、金と赤を混ぜたような強い光を体からずっと出していた。
お互い息を切らしながら、声をかけ合うが・・・、
「だから魔法の使い過ぎだ、もっと押さえろ・・!」
「だから、うるさい!私に命令するな!」 ・・こんな調子だ。
・・・・突然嵐のような強い雨と風が起こった。
周りの悪魔が飛ばされ、流され、見えなくなった。
「アマンダ、おまえか?」
「いいや、・・・。」
不気味な悪天候に悪感と緊張が、じんわり来る・・・。
俺たちはその場に立ち尽くし、辺りをソワソワと見渡し始めた。
「おまえはここにいろ!」 急に声を出しアマンダは一人走る。
「どこへ・・・?」 俺はセスアシュリーと残され、・・・?
雨が止んだら今度は、地震か?と思うような強い揺れだ!
地面の土がゴボッゴボッと勝手に混ぜ掘り起こされ、その動きで立っていられなくなった!
そしてくる、大きな巻き込む風! ・・・竜巻!!
「・・うわッ・・!!」
俺とセスアシュリーはその風に巻き込まれる! 円を描きながら吹き荒れる風に足元を取られ、地から体が浮き上がった!
・・・竜巻の中で俺たちは離され、俺だけ風の外側に弾かれ、セスアシュリーは風にのって舞い上がる!
地面に落とされた俺、すぐさまその腕を誰が引っぱって・・・?
「立て! ジクト!」 「・・・アマンダ!」 「こっちだ!」
竜巻から逃れ、一緒に走り出した!
大きな木の裏側に回って隠れるように座り込んだ。アマンダはそこで結界をかける。
透明の薄い膜に包まれた、そして二人で竜巻を見上げた。
「アマンダ、セスが・・・!」
「わかってる、今わざと離れたんだ、仕掛ける為だ、・・セス様には頑張ってもらう!」
「・・・って、あの竜巻は?」 ・・・あああ、遂に・・?
アマンダは少し首を傾げた。
「よく分からないが、凄いエネルギーを出すヤツが現れた、そいつの意識が空の雲一面にある。」
「・・・・?」 雲がディーゴか・・・?
・・・とにかく、ディーゴが復活した!
竜巻の上の部分は空の黒雲と混ざるようになってそこで渦を作っていた。セスアシュリーの姿は全く見えない。
「悪魔に喰われたんじゃないか?」 「姫様を悪魔は喰えん・・・。」
「セスだろ、喰えるさ!」 「・・・そこが狙いだ。」
アマンダはキリッと俺を見た。
「姫様が人間になられたと勘違いさせて、油断したところを狙う!」
「ヤツは千の眼を持つと聞いた、・・・うまくいくか・・?」
「その千の眼全部を姫様に集中させる! 見ろジクト、ヤツが徐々に姿を変えてくるぞ・・。」
「・・・・なッ?!」
竜巻の激しい風がおさまり、モコモコとした黒雲が地上に降りてきた。
そこから、大きな手の形をした雲がもわっと出てきた、その手の平に・・・、
あ、いた、セスアシュリー! その中で倒れている!・・と思ったら、
不自然な早い動きでピクッと顔を上げた?!
そしてスクッと立ち上がる。そこで、黒雲から出る巨大な眼が2つ・・・!!
・・・もう、手の汗握ってこれを見る・・・、頑張れッセス!! これはおまえの一世一代の大仕事だ・・!!
雲から目だけを伸ばして悪魔がギョギョッと、セスアシュリーに近づいた、
セスアシュリーは立ったまま微動だにしない。・・・と思ったら、
スーッと両腕広げて悪魔を招き入れるような仕草をした?!
やっ、やるじゃないか、セス・・・! と感心している場合じゃない、
「おお、アンジェリーナ姫よ・・・、」
野太い声が響いてきて、そう言った、・・・確かに聞こえた!
・・・イカン、気持ち悪すぎる、これだけで十分アシュリーが穢された。
その黒雲にも変化が・・・、雲の表面が剥がされるように消えて、徐々に顔や手足の部分がはっきりしてきた。8メートルぐらいの黒い大男がモワッと現れる。
悪魔は地に座り込んだ。手の平にいたセスアシュリーは滑るように落ちてこのあぐらの中に小さく座った。
これにうっとり表情の悪魔!
胸で手を組んで悪魔を見つめ返すセスアシュリー、・・・さらに驚くべき行動に出る!
悪魔に向けた顔の、その唇を・・、尖がらせた! って、おおっ・・・? 何を? セス! そんなスキルをどこに? いや、ゼロなんだ、ゼロなのにそこまでやるのかっ?!
俺は目を背ける、アレはアシュリーじゃない、セスだから、・・・ああ、悪魔の荒い息づかいが聞こえ出すと、・・・もう、ホントにイカン、イカン、・・・いやらしくて・・・、
どうあってもアシュリーが穢されている・・・。
「悪魔が興奮してるぞ! 完全に姫様だと思い込んでいる、・・やっぱり匂いをつけたのが正解だったな!」 アマンダが興奮して言う。
なんとかしてこの光景に目を戻した、・・・さすれば!
悪魔は体をグググーッと縮めてきた、そして口の辺りから大きな長い舌を出す。
「・・・ぶェッ!」 もう、ヒドい・・・、
舌なめずりしながら頭を揺らした、・・・躊躇しているようにも見えたが、アシュリーとどうしたい? キスか? はたまた食べるのか? ・・・あーあ、ダメだ・・・!
悪魔の正体がはっきりする、ロ○コ○傾向のアシュリーにイケナイ気持ち↑↑のエロ悪魔だった!
「ジクト、落ち着けよ・・、」 「おまえもな・・・、」
悪魔はもっと体を小さくさせてきた。3メートルほどになった。
ふと、セスアシュリーの目線と悪魔と顔の向きがズレていることに気付く。悪魔は小さくなったのに、悪魔を見るセスアシュリーの顎の角度は変わらないんだ、 それって・・・?
・・・・失神している、ナウ?!
いつから?! いや、セスは本当に偉かった!
もう最初からだった、その行動すべてに意識がなかったとか・・・。
俺とアマンダは、結界をかけたままゆっくり動いて、悪魔の背後に回った。
いいところで、足を止める。
「ジクト、おまえはここで私を見ていろ・・!」「ン・・、」
アームファイトで決めた通りアマンダが先行する、魔法を制限しろとか、もう言わない。
・・・今や、悪魔がその黒くモコついた体でセスアシュリーに抱きつき、その舌が絡みつかんとしたその時に・・・!
「今だッ・・!」 結界抜けて、アマンダが飛び出した!!
すでにその体を戦いの色で、光輝かせ・・・、 勝負にいくッ!!
俺は結界内に留まりその動きを見守った。
・・・ああアシュリー、君は無事ミアに着いたか?
ミアの景色はやっぱり美しいだろう? 君をやさしく包んでくれるはずだ。
俺は今から戦うよ、真実を守り、導くために・・・、
・・・君はただ、そこにいてくれ。
アマンダは剣を抜かなかった、素手で悪魔の肩の辺りに飛びついた、そこでグッとしがみ付き力を出す! ・・・アマンダの力は光の炎になり、悪魔の体を混ぜるよう焼き始めた!
完全に隙をつかれ、アナンダの攻撃を許してしまった悪魔・・・!
「グォーッッ・・、」獣が叫ぶような声でもがき始めた!!
おお、体の焼けたところから黒い溶液が流れ出ている・・・!
セスアシュリーは、腕を広げ、唇を尖がらせた姿勢のまま地面に倒れた、・・・その緊張がとれれば、一瞬に顔がセスに戻る。
「・・・おのれェ、騙したか・・・!」 苦し紛れに悪魔が言った。
「騙される方が悪いんだよッ! このドスケベ悪魔めッ!!」
アマンダが更にググッと力を入れて自身の光を強くする。まさに人体凶器だ!
「・・・・・!!」
悪魔が、地を揺るがすほどの絶叫を・・・!!
異常なまでに興奮!! いけるんじゃないか!? アマンダ、やれるぞッ! このまま行けェーッ!!
確実にアマンダの光が悪魔をむしばんでいくように見えた、が・・・、
・・・しかし苦しんで、体からとめどなく溶液が流れ出ても、悪魔の体自体変化がなくその状態を延々続くだけで、・・・これは?! 致命的なダメージになっていないのでは?!
悪魔の呻き声が、笑い声にも聞こえてきたら・・・?!!
やがて悪魔はその体を膨らませ始めた・・・、アマンダは離れないよう必死に食らいつくが・・、
ボッ、ボボボッ・・・、ボボボボボーッ と不思議な音が聴こえ始めた、何が・・?と茫然としていると、悪魔の姿は消えて代わりに黒く薄い煙が森中に広がっている、
・・・いつの間にやらアマンダも見えなくなって・・・。
わわわッ・・・!!!
いきなり真っ暗だ、黒い煙が濃くなって一瞬に闇の世界に包まれる・・・!
同時にほのかに漂う不思議な香り・・・、イヤな匂いじゃなく、甘く芳しい香りがしだいに鼻についてきた。
これは悪魔の攻撃だ、まともに受ければ絶対ヤバいことだ・・・、でも俺は結界の中だから、大丈・・ブ・・・、と思って・・、ここまではまともだった、俺・・、しかし・・、
頭がぼんやりする・・・、 ここは、夢の中か・・? 何かをしていた・・・、何を?
・・・結界って何だっけ? ・・・悪魔って・・・? ああ・・・、
・・・女だ、女を探してる・・・、
暫くご無沙汰の俺・・・、気が遠くなるほどお預け状態・・・、もう、そろそろいいだろう・・、
・・・アマンダ・・・、
そう彼女だ、・・俺の新しい女、
彼女、どこ行った? どこにいるのか、わからない。
アマンダの名を呼びながら、闇の中を彷徨った。・・・、おや、人が倒れている・・・、
・・・アマンダ? ・・いや男だ、おじさんだ、汚い顔だ、 ・・・こんな男に用はない。
ほったらかして・・・・、 また、一人歩き出す・・・。 どこへ・・・?
俺、何をしてたんだっけ・・・?
・・・・!!!
・・・また、ハッとする! 声が聞こえて・・・、誰・・?
誰だ、女の声・・・、
(・・・ジクト、・・・ジクト!!)
横から顔を出した女が、・・可愛い! これが俺の探している女、名前は・・? 何で武装? 脱がしにくいんですけど、 ま、誰でも、・・何でもいいや!
咄嗟に抱き着いてキスしようとしたら・・・、顔面パンチと腹に膝蹴りをくらう!
・・・イテーよ、なんて乱暴な女だ・・・、しかしこの痛みに憶えあり・・・、懐かしい感じがする?
(ジクト!! ・・しっかり私を見ろ!) ・・・ん?
・・・・ハッとする!
見れば女の体が光っている・・・、「アマンダ!!」
(悪魔の仕返しだ! 異臭で混乱させてきた!) ・・・へっ?!
(エロ返しだ、こんな罠にまんまと嵌るのはおまえぐらいだ! 今、匂いはブロックしたが、長く吸うと本当に頭の中が溶けて本物のバカになるんだ!)
・・・? ええっと、何々・・??
アマンダの光で、ここが洞窟のようなところだとはわかったが・・、徐々に現状がはっきりする。
・・・しかし、だ、 「・・俺はどうなっていた?!」
(どうもなっていない、まんまのおまえだ。) 呆れた声で、冷たく言われた。
「アマンダ、・・・おまえは・・、」 俺の横にいては不自然なような・・・?
そう、確か・・・?
(まだ頭が混乱していやがる、上を見ろ、・・。)アマンダに言われ、見上げると、真っ黒な空。
(悪魔の尻だ。)
・・・? 何が、どうして、こうなった??!
「ここは土の中だ、悪魔の死角にいる。」
(いきなり巨大化してきたから、隠れたんだ・・、)
さらにアマンダが魔法をかけると、悪魔の尻らしきところが透けてきて、地上の荒廃した森の景色が見えてきた。手前から枯れた木々が押し倒されている・・・、そこに巨大化した悪魔が座っていて周囲では黒い溶岩が怒涛のように流れていた。・・・地獄景色が更に悪化している。
ずっと見ていると気分が悪くなった。
(大きくなって死角を作ってしまった、バカめ。)
済まし顔でアマンダは言う。
「そうか、今、俺たちがネズミレベルに小さいのか。」
(そうだ。)「やったな・・、ハハハ・・。」
適当に答えて、笑って、頭がスッキリして・・・、
「・・・!! アマンダ、おまえは戦っていた!」 やっとすべてが頭に甦った。
「おい、何を呑気に・・、悪魔は・・? そう、ディーゴだ・・!! 早く殺らなきゃ・・!」
突然俺が焦ったように言っても、アマンダは静かに頷くだけだった。
(これがディーゴという悪魔か?)いや、このセリフにびっくりするだろ。
「それが、分からず・・・?」
(私に分かることは、こいつがこの森の悪魔らを支配する頭領のような存在で、膨大なエネルギーを持っているということだ。)
「それがディーゴだろ?」
(姫様への執着は凄かったな・・・。)
「絶対ディーゴだ! おまえバカなのか・・?」
(・・・うるさい、おまえこそ聞いてばかりのバカだ、少しは自分で考えろ!)
「質問するのは一般人の特権だ、おまえは答える側だろ、この魔法族の劣等生めが・・・!」
(おまえが言うな!)
「喧嘩している場合じゃない! おまえここで何をしているんだ? なぜ戦いに行かん?」
(・・・、それがデカくなり過ぎて・・、魔法が思うようにならん・・・、光が足りない・・。)
「・・・えっ?」
(結界はとっくに壊されているから・・・、気をつけろよ・・・、)
ドッと不安が押し寄せて・・・、青くなる俺。
アマンダは腰から剣を引き抜く。
(でも心配するな、悪魔は殺る。)
「・・・・大丈夫か・・?」
(今が本番だ・・・、)アマンダは笑っていた。そして悪魔を見上げた。
(外からはもう無理だ、中に入らないと・・・、それしか方法がない・・・、まだ成功させたことないけど。)
「・・・! おい・・?」
(おまえは私が仕留め損ねたら出ろ、合図は送る。)
この時のアマンダの顔が自信なさそうに見えたら、・・・それはやっぱり、間違いだ。
この女の底から湧いてくる力は、そんな半端なものではない・・・。
『・・クソッ、どうしてできないんだ!』
夜通し何かの練習していたアマンダ。
何かなんて知らないが、・・・でもそれは、ケイトには出来ていたこと・・・。
・・・越えられなかった壁が、今・・・、
「・・・アマンダ!!」
アマンダは俺の傍にいなかった。・・・随分高いところにいた。
ずっと悪魔の肩の辺りにしがみ付いた状態で・・・、光を出し続けていた・・・、
悪魔は・・・、20メートルはある巨大猛獣と化している・・・。
今や俺の体は地にあった。そこから50メートほど離れ、眠っているセスと木の影に隠れていた。
幻になって、おかしくなりかけた俺を助けてくれたのか・・?
・・・・もう精も根も尽き果てようとしている・・・、ああ、これはマズいことだ、・・・、
サングレの寂しい日の光では足りない・・・、光力が増えない、このままだとケイトと同じことに・・!
・・・ああ日の光よ、もっとアマンダに射してくれ・・、お願いだ・・!!
ここで祈ることに意味なんてない! 俺は木の陰から一歩出る、途端に、(・・・まだ出るな!!)
と、強い言葉が胸にきた!
アマンダは己の剣を天にかざす・・! 剣はアマンダの気迫を受けて激しく光った!
その光が剣より放たれ天に上がり、厚い黒雲の一部を吹き飛ばす!
そしてそこにできる丸い穴・・・、
そこから差す光は、一直線にアマンダに落ちた!
「ウオオォーッ!!」
再び輝きを得たアマンダが雄叫びを・・・、 ああ、この時に・・・・!
俺は思い出していた・・・、
部下が悪魔になり俺を襲った時に、ケイトが巨大化した敵の中に入り込んで戦ったことを・・・!
まさに今、それが起こった!・・・大きな悪魔の体に小さな神々しい光の渦ができて、アマンダの体はそこからめり込んでいく・・・、
完全にアマンダが悪魔の中に消えた、・・・!
直後、悪魔が猛烈に苦しみ始める・・・、これにアマンダの術が成功したことを実感!
もがき苦しみながら悪魔はその巨大化した体をどんどん縮めていった。
・・・よしッ、俺も・・・!
また木の陰から飛び出そうとして、 (・・・待て!) また、制止だ。
(無理だ、おまえはこの中に入れない・・・。)
俺は入ったことあるんだよ、ケイトの時にだ、・・・加勢するさ!
(ケイトがどうした? そんなことできるかっ! 私一人でいっぱいだ・・・、)
・・・そうなのか、やっぱりあれはケイトの力か・・? いや、・・、
(・・とにかく! 私の合図を待てと言ったろ・・、)
・・・おまえ、一人で殺るつもりだろ・・・!
(ああ、私一人で殺るッ!)
・・・クソッ、意地っ張りめ・・!
時折固まるように悪魔がその動きを止めた・・、また鈍い声を出して蠢く・・、確実に弱らせている・・、体の大きさも俺の視野で捉えられるぐらいにまで小さくなった。
もう少しで・・、後、もう少しで・・・、殺れる、アマンダ!
悪魔を斃してもケイトと同じ運命をたどるかもしれなかった、でもこの時それを考えない。
グッと眼を閉じて勝利を強く願う!
アマンダの渾身の光パワーを瞼の裏で感じ、・・・ひたすら想いを送る!
自分は活躍できなくてもいい、・・ここでアマンダが悪魔を仕留めたら、それはきっと自分のことのように嬉しくて誇らしい気持ちになるから・・・!
・・俺には、わかるんだ・・・、おまえの苦しみが、だから!
(・・・おまえ、ごちゃごちゃうるさいぞ、・・・そろそろ準備しろ・・・、)
・・え、俺の出番あった?
(・・・どうしてもわからないんだ、命の核が、・・・体を小さくさせることは出来るんだが・・・、)
アマンダが苦しそうだ・・・、
(人の大きさにまでなったら、・・・おまえが外から刺してくれ・・。)
『・・・悪魔を狙う時は、人の姿の時・・・、急所は背中から刺せ!!』
人の姿になればはっきりする急所・・・、首か・・、左胸!
にわかに緊張! アマンダが、最後のおいしいところを俺にくれるという・・!
背中のそれをグッと握り締め・・!
おう! 任せろ! その気でムラムラしてたからな、俺は・・!
(いちいちイヤらしい言い方しなくていい・・、)
ハハハ・・、で、今さらながら、どうして離れているおまえと会話してるんだろう?
(別に、心の臨時開通だ。)
・・・ははっ、そうだ、奇妙な縁で仲間になった。
悪魔の、老婆が嘆くような力ない声が響いた・・・、その姿ももうすっかり小さくなって人間ぐらいで、ただの老人が屈んでいるようだった、 ・・・今なら・・・!
気力は最大限までに上がるッ・・!!
(今だ、行け!!)
合図とともに俺は剣を引き抜く・・・、そして走る! ・・・それの真後ろについたッ!
首は伸びたり縮んだり、時々消えたように見えて狙いにくかった、・・・なら、剣先は左胸に定まる。
上手くいくか? いくさ・・・、絶対!! 今の俺は絶好調だ!
・・・アシュリー、今度こそ終わらせる、・・すべてを!
「アマンダ、おまえは早く悪魔から出ろ! 間違えて刺しちまうぞ・・!」
(・・・今、私が離れたら、一気に悪魔が膨張する・・・、)
・・・・! ん、それは・・・?!
(・・大丈夫だ、避けている、・・早く刺せ!)
・・・俺は躊躇する、本当に? ・・・大丈夫だろうか・・・?
(・・・どうしても消せない悪魔のエネルギーが私を押し出そうとするんだ・・、もう、もたない・・・、早く!!)
・・・この時だ、悪魔の体から黒く焦げた剣が落ちてきて・・・、悪魔の背中からもう一人の影が浮き上がる・・・、おお、その影は悪魔の背に甲羅のようにがっしりと覆いかぶさっていて・・・?
悪魔がもがき暴れても、・・・・必死で背に食らいつく影・・・、自身の光のオレンジを辛うじて残しつつも髪のリボンは落ちて、服はボロボロ、身は焦げて茶色く見えた・・・。
・・あ、ああ、アマンダが・・・、
悪魔の急所の前に・・、アマンダが、・・・重なっている・・・?!
(ジクト、迷う間はない、今のこの好機を逃したらすべてが終わるんだ、・・・だから早く、刺せ!)
「アマンダ、離れろ!! でないと刺せん!」
いけない、王の剣先が細かく震え出す・・・、どうしていいかわからなくなった・・・、
一気にテイション急降下・・・・、 そして、その意思を失くす?!
おお、何やってんだ・・? 悪魔退治・・?! 誰が・・?
バカッ、・・・ンなコトできるわけないだろッ・・・、
同時に変な記憶が甦り、ますます俺はおかしくなった。
兄アロイス、あの男は義理父であった大海賊の剣を全く使いこなせなかった。
当然さ、そんな器の人間じゃないからな・・、
じゃ俺は? ・・・同じだ、あの男と・・、
おお、なんてだいそれたこと・・・! 俺じゃない、アシュリーの父親ヴァルディー王の剣で、悪魔を刺す男は・・・!!
もう、体がガタガタ震え出して・・・・、
(・・・おっ、おい、・・ジクト?? どうした・・?!)
・・・・、 ムリだ・・。
(・・・・!)
アマンダは、俺の弱気に逆上するかと思ったが・・・・、
予想とは裏腹に、沈んだような声が胸に染み込んできた。
(私も無理だったんだ・・・、ケイトなら光を切らすことなく中心核に入り込みそこを刺す! 鮮やかに決めて悪魔から脱出するだろう・・・、そうじゃなかったか?)
・・・・、ケイトの最後の戦い・・・、
・・・いや、そんなに鮮やかじゃ、なかった、・・・あいつも必死だった・・・、
悪魔が、荒れ狂うようにもがきだす・・・! それを全精力をもって、抑え込み・・・、
(・・・ああジクト,殺れ!・・私ごと・・、悪魔を、刺せ・・・!!)
・・俺の息が、一瞬止まった。
そうか、そういうことか・・・、 悪かった、子供子供とバカにして・・・、
本当に悪かった、甘ちゃんコンビだなんて言って・・・!
おまえは違う、俺なんかとは、・・・・その尊いプライドは、妹だからという枠では自分を許さなかった、常にその者と対等であるべく努力し続けた。
・・・その志はまるで同じで、間違いなくケイトを継ぐ者だ。
いや、おまえが相手にしている敵は、ディーゴだから・・・、ケイトを超えたさ。
・・・・! ああ、アマンダ、俺もおまえに追いつきたい・・・!!
俺は決意する。落ちかけた剣の柄を握り返し、・・・目前のそれに剣先を向ける。
震えは止まっていた。
アマンダ、おまえと俺でディーゴを殺ろう、ローレアをびっくりさせてやろう!
(・・・私たちは二人で一人前だ・・・。)
ああ、俺たちは最高のコンビだよ!
アマンダの光が煌々と輝いた! ケイトの最後の光も艶やかで美しいものだったが、それ以上だと思った。
・・しっかり、抑え込んでくれよ、・・・外さないから、・・・・、
おまえの魔法戦士としての気高い誇りと覚悟は・・・、
その最後は・・・、 俺が見届けてやるッ!!!
実際この時の俺に選択の余地はなかった、アマンダごと悪魔を刺さなければ、悪魔の生を許すことになり、もっと最悪なことになる、・・・。
しかし、最後の最後で俺に沸いた心は、アマンダをただ、殺したくない気持ちだけだったのか・・・?
・・・常に甘い感情を持ち続け、厳しさに耐えかねない惰弱な心はいつの時も俺から離れない、
この時も・・・・! 悲しきかな、だ・・・。
勢いよく駆け出た! アマンダ目がけて一気に剣を、ああ・・確かに・・・だ、が、ピタリと止まる、その背中直前・・・、あと、数ミリのところで剣は・・・、
・・・寸止め・・・、 これからは、俺を寸止め大将とでも呼んでくれ。
・・・1,2,3秒経過した。・・・アマンダが力尽きるように、光の色を失くした。
俯いて動けない俺に悪魔がニタリと笑って覗き込んだ。その醜悪な眼を見た時、強い恐怖を感じ頭の中が激しく混乱し始める。
その瞬間に・・・、悪魔の物凄い力が・・・、 疾風が起こった!!
・・その体をググーッと膨らませ、その高さは空に届くほどのとてつもなく大きな怪物になった。
怪物悪魔が起こした大風に巻き込まれる・・・、
体が浮き上がって、アマンダとともにその風に吹き飛ばされた! セスも・・・。
何が何だかわからない状態になって、意識も飛んだ・・・・、
・・・・王の剣も俺から離れ、遠いどこかへ飛んでいってしまった。
・・・ああ、アマンダ、許してくれ・・・。
