引っ越し前のブログに書いていた記事を一部移しました。
遺言について
「遺言」
遺族に向けて示すその人の最終意思の表示
「遺言書」
相続人等に、身分や財産に関する事項についての一方的な意思表示
「遺書」
残された家族等に、伝えたい言葉や心情などを書いたもの
「遺言書」は、財産や身分上の相続手続の根拠になるものですので、「遺言書」として成立させるためには、法律で決められた書き方をしなければなりません。
では、「遺言書」にはその内容に至った経緯や心情などを書き加えることはできないのでしょうか?
その場合は、「付言事項」を活用するということも出来ます。
何故このような内容になったのかを記載することにより、相続人がその内容を心情的に受け入れやすくなります。
ただ・・・
「付言事項」を活用するよりも、家族などへの感謝の言葉や伝えておきたい事とともに「手紙」として残した方が良いのではないかと思います。
これは、私の経験から感じたことです。
「遺言書」を大きく分類すると、普通方式と特別方式に分けられます。
一般的である普通方式は、さらに以下の3種類に分かれます。
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
では、遺言書の特別方式というのはどういったものでしょうか。
文字どおり、「特別な場合」の方式です。
そのため、遺言者が普通の方式で遺言を行う事ができるようになってから6ヵ月間生存した場合には、特別方式による遺言の効力はなくなってしまいます。
特別方式の遺言には、危急時遺言(死亡の危急が迫っている)と隔絶地遺言(遺言者が一般社会との交通が断たれた場所にいる)があります。
危急時遺言は、以下の2種類です。
○一般危急時遺言
病気や怪我で死亡の危急が迫っているとき
証人3人以上の立会が必要です。
○難船危急時遺言
船舶や飛行機が遭難して死亡の危急が迫っているとき
証人2名以上の立会が必要です。
隔絶地遺言は、以下の2種類です。
○伝染病隔離者遺言
伝染病などで隔離されているとき
警察官1人及び証人1人以上の立会が必要です。
○在船者遺言
船舶の中にいて一般の人との連絡がとれないとき
船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会が必要です。
一般的な、普通方式遺言について。。。
「自筆証書遺言」
文字のとおり、自筆で書く遺言書です。
自筆証書遺言で注意することは・・・
○全文を自筆で書くこと
自筆(手書き)ですから、PC、ワープロ、タイプなどで作成してはいけません。
自筆したものをコピーしてもいけません。
筆記用具は、鉛筆など簡単に消せるものは避けましょう。
○日付を書くこと
日付を特定しますので、吉日という書き方はいけません。
○署名すること
氏名を(もちろん自筆で)書かなければいけません。
○押印すること
認印でもかまいませんが、実印のほうが良いでしょう。
自筆証書遺言は、誰にも知られずに書けますし、いつでも訂正することが可能です。
そこがメリットですが、デメリットにもなります。
発見されない可能性がある。
発見されても、偽造や隠匿される不安がある。
書き方に不備があれば、無効になる。
また、内容が不明確な場合、解釈の違い等により相続人間でトラブルになる可能性もあります。
さらに、家庭裁判所で検認してもらう必要があります。
つまり、作成は比較的簡単に出来ますが、後(相続人)の手続が煩雑になるということですね。
「公正証書遺言」
公証人が作成する遺言書です。
遺言者の口授に基づき、公証人が、公正証書遺言として作成します。
普通方式遺言では、公正証書遺言が安全で確実です。
○公証人が作成するため、不明確な内容にならない。
○原本が公証役場に保管されるので、偽造や隠匿、紛失等の不安がない。
○家庭裁判所の検認の必要がない。
・・・などのメリットがあります。
デメリットとしては・・・
○費用がかかる。
○証人2人の立会いが必要
・・・といったところでしょうか。
遺言者が公証役場へ出向くことが原則ですが、出向くことが困難な場合には、公証人が遺言者の自宅又は病院等へ出張することも可能です。
「秘密証書遺言」
文字どおり、遺言内容を秘密にしたままする遺言です。
自筆証書遺言と似ていますが・・秘密証書遺言は、公証役場で手続きをします。
封が施された封筒の中に、遺言書が入っていることを、公正証書の手続きで証明します。
さらに、自筆証書遺言との大きな違いは、自筆でなくてもかまわないことです。
(ただし、署名、押印は必要)
メリットとしては・・・
遺言内容を秘密にしたまま、変造等を防げるということです。
デメリットとしては・・・
○遺言内容を公証人が確認出来ないため、内容によっては無効になる可能性がある。
○公証役場には、遺言書の封紙の控えだけが保管されるだけなので、隠匿や破棄などの危険性がある。
○証人2人の立会いが必要
○家庭裁判所で検認してもらう必要がある。
メリットに比べてデメリットが多いですね。
「自筆証書遺言」
「公正証書遺言」
「秘密証書遺言」
三種類の普通方式遺言についての簡単な説明、メリットやデメリットと思われることを書いてきました。
では、どの方式がベストなんでしょうか。。。
一般的には、「公正証書遺言」をおすすめします。
やはり、遺言者にとっては、安心感と確実性があります。
それに、相続手続の煩雑さも軽減されます。
「公正証書遺言」の作成方法について・・・
○まずは、公証役場(公証人)に相談しましょう。
遺言内容や必要書類、証人の手配等について打合せをします。
○必要書類(印鑑証明書、戸籍謄本、不動産や動産の確認書類など)、証人(住所、氏名、職業、生年月日等のメモ)遺言原案を持参し、公証役場で再度打合せをします。
この段階で、ほぼ公正証書遺言が出来上がります
○証人と公証役場へ行き、遺言内容を口授(言葉で遺言内容を説明)します。
この日に正式な公正証書遺言が出来上がります。
上記は一般的な流れですが、あくまでもケースバイケースです。
場合によって、公証人との打合せ回数が少なくなったり多くなったりします。
では、私共行政書士が「公正証書遺言」作成について携わる場合はどうなるんでしょうか・・・
行政書士が「公正証書遺言」作成について携わる場合
○遺言者が公証役場へ行かれるのは、口授される日だけになります。
まずは、遺言内容についてご相談ください。
○法的に支障ないかどうかはもちろんのこと、さまざまな角度から検証します。
○必要書類の手配と相続人調査(法律上の相続人の確定)をします。
○行政書士が公証人と事前打ち合わせをします。
○証人になることも可能です。
証人について・・・
相続や遺贈に関係のある人(推定相続人、受遺者、直系の血族・・・など)、未成年者、公証人の関係者などは証人になれません。
証人が遺言内容を知るわけですから、口外されるという不安が残りますね。
ですので、証人を選ぶのは慎重を要します。
そこで、法的に守秘義務がある士業者を証人にすれば、不安も解消されます。
遺言内容によっては、士業者を遺言執行人にするということも良いと思います。
これまで、遺言の方式(「普通方式」「特別方式」)と、遺言の方法(「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」)について書きました。
では、遺言で、できることとは?
大きく分けると、三種類になります。
○財産に関すること
○身分に関すること
○祭祀の承継のこと
○財産に関すること
遺言というと、ほとんどの内容が財産のことと言えるでしょう。
相続させる人や遺贈する人、分配方法など・・・
それ以外の財産に関することとしては、「財団設立(寄付行為)」や「5年以内の遺産分割の禁止」などがあります。
○身分に関すること
遺言による認知
未成年後見人の指定
後見監督人の指定
遺言による相続人の廃除、及び排除の取消し
遺言執行者の指定
○祭祀の承継のこと
お墓、お仏壇など先祖を祭るために用いられる財産などを、誰に受け継がすのかを指定出来ます。
資産家じゃないし、遺言なんて必要・・・?
例えば・・・
○財産が全く無い
○財産があっても、法定相続人が一人のみで、その人に財産をそのまま承継させる
○身分に関することを遺す必要がない
上記のような方は、遺言の必要はないでしょう。
しかしながら・・・
財産の多少は関係なく、いざ相続となった時には、相続財産の分割協議をしなければなりません。
思いもよらなかった紛争に発展してしまうこともあります。
やはり、遺言は必要だといえるでしょう。
相続人にとって、遺言があったほうが精神的にも楽になります。
特にこんな場合は・・・遺言を
○相続人資格者となる人が1人もいない
お世話になった方々への遺贈や施設等への寄付など書かれてはいかがでしょう。
(本当に相続人がいないかどうか調べておくことが重要です)
○内縁の妻(夫)がいる
内縁の妻(夫)に対しての相続権は認められていません。
○推定相続人の中に行方不明者がいる
遺産分割協議のために「不在者財産管理人選任の申立」など煩雑な手続が必要になります。
行方不明者を含む各相続人の相続分を指定しておくとよいでしょう。
○先妻との間に子供がいる、後妻がいる、後妻との間に子供がいる
紛争になりやすいです。
○後妻に連れ子がいる
養子縁組をしていない連れ子には相続権がありません。
○夫婦間に子供がいない
配偶者以外に、直系尊属→被相続人の兄弟姉妹(死亡している場合はその子)にも相続権が発生します。
財産のほとんどが、現在居住している不動産の場合は特に注意が必要です。
兄弟姉妹(死亡している場合はその子)には、遺留分の権利がありません。
○現在別居中(離婚訴訟中など)の配偶者がいる
正式に離婚しなければ、相続権があります。
○その他
相続人以外に残したい人がいる。
相続人の廃除(又は廃除の取消)をしたい。
介護が必要な家族がいる。
相続人がたくさんいる。
事業を営んでおり、事業承継者に残したい。
(事業承継問題は、機会があれば別カテを立てたいと思います。)
・・・・など
遺言書作成の時に注意すること
「自筆証書遺言」の項で、注意事項を少し書きましたが、その補足です。
ご自分で作成される時の参考にしてください。
○財産目録を作る
まずは、相続の対象となる資産、権利、負債などを一覧表にしてみます。
出来上がった一覧表のリストを金銭に置き換えて(不動産等)考えます。
特に不動産は、評価額や時価額に注意してください。
○相続税に注意する
ほとんどの方は対象にならないと思いますが、対象になる場合は、納税資金の準備や節税方法について考えます。
作成時の注意事項
○曖昧な表現を避け、明確に書く
基本は、「誰に」「何を」「どれだけ」相続させるかということです。
不動産の場合は登記事項証明(登記簿謄本)、預金の場合は銀行名と口座番号などを参考に
何分の一というような「割合の指定」はさけるべきです。
○遺留分
配偶者、子、直系尊属(両親、祖父母)には、遺留分があります。
遺留分を侵害するような分け方はトラブルを招きます。
(遺留分の説明については、別の機会に・・・)
○特別受益
相続人の中に、特別に利益を受けた人がいる場合は考慮します。
(特別受益の説明については、別の機会に・・・)
具体的に理由を記載します。
○寄与分
相続人の中に、自分の財産形成や維持等に寄与や貢献したと思う人がいる場合は考慮します。
(寄与分の説明については、別の機会に・・・)
具体的に理由を記載します。
○遺言執行者
相続手続きをスムーズに行うために、出来れば遺言執行者の選任を。
子供の認知、相続人の廃除、廃除の取り消しに関しては、必ず遺言執行者が必要です。
いろいろな書き方の見本(書籍やネット)がありますので、参考にしてみましょう。
あくまでも見本ですので、上記のようなことに注意しながら考えましょう。
「遺留分」(いりゅうぶん)について
相続人に保証された、遺産の一定割合の取得分のことです。
遺言内容については、遺言者が自由に決めることが出来ます。
例えば、法定相続人以外に全財産を遺贈するという内容でもかまいません。
しかし、そのために遺族が生活にも困ってしまうような場合もありますね。
そこで、民法では遺留分の制度が定められています。
遺留分は、「権利」ですので、主張しなければ取得出来ません。
主張するかどうかは自由です。
もちろん放棄してもかまいません。
遺留分を侵害された相続人が権利を主張する場合は、他の相続人、受遺者、受贈者等に、自己の遺留分の範囲まで財産の返還を請求します。
これを「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせきゅう)」と言います。
つまり、相続人の遺留分を侵害するような遺言をすると、トラブルを招く可能性が大きくなるということです。
訴訟になってしまうケースも多く見受けられます。
遺留分は、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に保証されています。
つまり、「特にこんな場合は・・・遺言を」で記載したように、夫婦間に子供がいない場合、遺言で配偶者にすべての遺産を相続させるようにすれば、兄弟姉妹は遺留分減殺請求権がありませんので、すべて配偶者に相続させることが出来るということになります。
遺言がない場合は、配偶者の法定相続分は4分の3、兄弟姉妹の法定相続分は4分の1 になります。
では、遺留分の割合はどう決められているのでしょうか。
文章では分かりづらいので、例をあげてみます。
「配偶者と子供1人」が相続人の場合
配偶者:2分の1(法定相続分)×2分の1(遺留分)=4分の1
子供:2分の1(法定相続分)×2分の1(遺留分)=4分の1
(子供が2人の場合は、4分の1÷2=各8分の1になります)
「配偶者と被相続人の両親」が相続人の場合
配偶者:3分の2(法定相続分)×2分の1(遺留分)=6分の2
両親:3分の1(法定相続分)×2分の1(遺留分)÷2=各12分の1
ケース別の図解でないと分かりにくいですね。(^_^;)
「特別受益」とは・・・
被相続人の生存中、相続人が被相続人から受けた特別の援助のことです。
つまり、相続分の前渡しです。
例えば・・・
商売の営業資金等を出してもらった
マイホーム建築のための資金を出してもらった
マイホーム建築用に土地を貰った
結婚資金を出してもらった・・・など
結納金や新婚旅行の費用等額によって該当するか微妙な場合もあります。
相続人のなかで、特別受益があった人と無かった人とでは不公平がおこります。
そこで、特別受益を相続分の前渡しとして計算します。
例
相続開始時の財産が3000万円
子供のうち1人が特別受益を受けていた
(マイホーム資金として1000万円)
↓
相続財産は4000万円ということになり、4000万円を各相続人で分割します。
相続開始後に特別受益について争いがおこるケースが多いため、相続人の理解が得やすいように遺言しておくべきでしょう。
「寄与分」(きよぶん)について
相続人の中に、被相続人の財産の維持や増加に貢献した人がいる場合、これを無視して相続分を計算するのは不公平になりますね。
そこで、貢献した分(寄与分)を相続財産から除いて計算します。
計算方法の例
相続財産5000万円
寄与分の評価額1000万円
↓
5000万円-1000万円=4000万円が、相続財産になります。
まず、4000万円を法定相続分などで分割します。
寄与者には、分割した財産に1000万円を加算して与えます。
寄与の例
○被相続人(父)の商売を、無給で長男だけが手伝ってきた。
○被相続人の商店兼自宅の増改築に資金を提供した。
○子供の一人が退職し被相続人の療養看護を努めた。
(配偶者の場合、療養看護に努めることは夫婦の当然の義務と考えられます)
相続人でない者は、幾ら貢献したとしても寄与にはなりません。
では、子供の妻が貢献した場合はどうなのか?
原則として、相続人でないため寄与にはなりませんが、夫の「履行補助者」という考え方をすれば、履行補助者の行為は本人の行為とみなされます。
相続人以外の貢献に報いるには、遺言で遺贈する方法があります。
いずれにせよ、寄与分が考えられる場合には、遺言しておくべきだと思います。
相続人(遺産を相続する資格のある人)と相続順位について
配偶者:常に相続人となります。
[第一順位](第一番目の相続人)
直系卑属(子(養子も)・孫等)
配偶者が既に死亡している場合は、直系卑属がすべての遺産を相続します。
被相続人より子が先に死亡している場合、孫がいれば死亡した子に代わって(代襲相続)相続人となります。
[第二順位]
直系尊属(父母・祖父母等)
直径卑属が誰もいない場合、相続人になります。
[第三順位]
兄弟姉妹
第一・第二順位の直系血族がいない場合、相続人になります。
代襲相続とは・・・
相続開始以前に、相続人となるべき人が死亡、相続欠格、相続人の廃除等で相続権を失った場合に、その人の直系卑属がその人に代わって同一順位で相続人となることです。
被相続人の立場で「遺言」について書いてきました。
今度は、相続人の立場で考えてみましょう。
相続人は、遺言書があればそれに従うことになります。
しかし、従わなくても良い場合があります。
遺言書と異なる遺産分割を、相続人全員が合意した場合(遺言執行者がいる場合は同意が必要)には、遺言書の内容どおりの遺産分割に従わなくてもかまいません。
遺言書が無い場合、民法上定められた法定の相続分に応じて、相続人間で遺産分割をすることになります。
もちろん、法定の相続分どおりではなく、協議(合意)により自由に分割することが出来ます。
遺産分割協議の結果は、遺産分割協議書にまとめます。
その後、不動産や預貯金、各種財産の名義書換等を行います。
相続人に未成年者等がいる場合は・・・・
「相続人の中に未成年者がいる場合」
相続人が未成年の場合、親権者が代理人になります。
相続人ではない親権者がいない場合、親権者は代理人になれません。
子の代理人として第三者の特別代理人の選任が必要となります。
特別代理人の選任手続は、家庭裁判所への申し立てが必要です。
例:夫が死んで、妻と子(未成年)が相続人
親が自分の利益を優先させて子供にとって不利益な協議が成立してしまう場合が考えられるため、親が自分の相続人としての立場と子の代理人を兼ねる(利益相反)ことは民法で禁止されています。
「相続人の中に認知症・痴呆等の方がいる場合」
家庭裁判所に後見開始の審判の申立(状況により保佐・補助)を行い、本人のために成年後見人を選任し、成年後見人が本人を代理して相続手続きに参加します。
「相続人の中に行方不明者がいる場合」
所在不明や、生死不明である場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法と、失踪宣告の申し立てをする方法が考えられます。