僕らのネタは出足が肝心だった。




状況説明という野暮な事はしないで会話で設定と今から起こる展開の前フリを伝えなければならない。



その出足でつまずくとそのまま終わりまでなんの引っかかりもなく最後まで行ってしまう危険性がある。



逆に出足に食いつきがあれば、後は芋づる式に笑いが起こる爆発力がある。



案の定、ほとんどのお客さんが僕らの事を始めて観る人たちだった。

歓声など起こらない。

静まり返る会場。



怖い。



お客さんの突き刺さるような目線が怖かった。



足がすくむ。



舞台上にセッティングをしながら



「食いつけ、食いつけ…」



と何度も口の中でつぶやいた。



そして



ネタが始まる。

それは短くて長い五分間の戦いだった。


緊張で頭の中が真っ白になりそうだった。


ははははっ


笑い声。

笑い声が聞こえる。


「食いついた!」


「よし、いける!」


僕らの想いを乗せたネタ

来る日も来る日もネタ合わせを繰り返した

同期にバカにされながらも止めなかった

ネタ作りに追われ

罵倒され

それでも考え続けたネタ

出る場を失い

俺たちに残された道はこれしかない

絶対に勝ち上がる

その全ての想いを乗せたネタ


無我夢中で演じ続ける僕たち。



笑い声で答えてくれるお客さんたち



あっという間だった。




ネタ中緊張でずっと足が震えていた

声も何度か震えた。

しかしやれる事は全てやった。



後は結果を待つのみ。