二〇〇〇年 一月





僕らのプロとしての芸人生活が始まった。




ネタバトルを勝ち上がって獲得した劇場のレギュラー権。

夢にまでみた劇場のレギュラー。


養成所に入った時、自分がそこに上がれるなんて夢にも思わなかった。


心斎橋の劇場のオーディションに毎回落ちていた時、自分達には無理なんじゃないかと何度も心が折れそうになった。


でも、気持ちだけは負けまいと何度も自分に言い聞かせて頑張った。


誰もが無理だと思っていても自分達だけは出来ると信じてやろうと誓い合って頑張った僕たち。


同期の奴らが笑っても、ネタ合わせを決して辞めなかった。


努力は必ず報われる。

そして勝ち取った権利だった。





でも、本当の戦いはここからだった。さらに過酷な、神経をすり減らすような戦いの日々、そして辛い現実が待っていようとは…


この時の僕らはまだ、知る由も無かった。




そんな思いの詰まったレギュラーライブの初日。

それは衝撃的なものだった。




大阪は古くから演芸が根付いている街。

その為、各テレビ局やラジオ局が主催となってネタのコンテストを数多く行っている。


それらは賞レースと言われた。


その中の一つに若手の登竜門的な位置づけでそこで最優秀新人賞、いわゆる大賞に選ばれると必ず売れると言われ、過去にそうそうたるメンバーが受賞しブレイクしていった賞レースがある。

それは毎年、成人の日の昼間に決勝戦が行われ、その模様が関西地方で生放送される。

その日は丁度成人の日でこのライブに出演するレギュラーメンバーの何組もが決勝に出場していたのだ。




ライブのレギュラーメンバーでその決勝に出ていなかったのは、僕らを含めたったの三組だけだった。しかもその中の一組は僕らと同時に昇格した後輩コンビだった。

僕らはライブ本番だというのに静かな楽屋のテレビでその様子をじっと見守っていた。


緊張の中全てのネタが終わり

そして結果発表…

なんとその中の先輩コンビが見事最優秀新人賞を受賞した。


静かだった楽屋に大歓声が上がった。


開演前の劇場ロビーのもその様子が映し出されていた為、大歓声はロビーにも広がっていた。


一瞬にして興奮に包まれた。


その直後、舞台が開演。

他のメンバーは賞レースに参加していた為、急遽三組だけで幕を開けたライブ。

受賞の興奮に包まれた客席。

ライブ中盤で

生放送を終え到着し、遅れて次々に舞台に入ってくるメンバー達。

その度に大歓声が沸いた。

最後に受賞後の記者会見を終え到着した先輩コンビが舞台に入って来た。その瞬間、会場はこの日一番の大歓声に包まれ、大興奮のままその日の舞台は幕を閉じた。

そして夢のような一日が終わった。

改めて僕はすごい舞台に立っているんだと思った。

芸人になる前から観ていた番組だった。

こんなのに出れたらいいなと思って観ていた。

でも、すごく遠い世界だと思っていた。

そんな番組に出ている人たちと僕は同じ舞台に立っている。

しかも最優秀新人賞まで取った人たちまでいる。

その事を考えただけで興奮した。




僕たちが出演していたレギュラーライブは今考えてもとてもレベルの高いライブだった。

現にその時最優秀新人賞を受賞した先輩コンビは後に始まった漫才日本一を決める番組で日本一になった。その後もそのライブに出ていたコンビが何組も漫才日本一に輝いている。そして他のほとんどのコンビが決勝に駒を進めている。

そんなライブに僕らは出ていた。




祝福される先輩コンビの後ろ姿を見ながら


僕もその番組に出てみたい!

大勢のお客さんの前でネタをしてみたい!


そう、強く思った。






二十三歳の成人の日の事だった。