萩の出張から帰ったら、横浜の兄から荷物が届いていた。
中身は、母の万年筆。
行方不明だった万年筆がペンケースに大事に仕舞ってあったから、あなたが使ってください、と兄から手紙。
2年前の秋、89才の母の余命3ヶ月、と主治医から宣告されました。兄妹で話し合い、高齢の母には告げず、動けるうちに卒寿のお祝会をすることにしました。
子どもたちからのお祝の選択は私に任されましたが、兄からは、もう時間がないので、母亡き後に自分が使えるものを選びなさい、と言われました。
私は紅い万年筆を選びました。
母はメモ魔で、テレビでも新聞でもインターネットでも、健康から金融まで、役立つと思ったことは全て丁寧にメモしていました。
書きやすいペンが欲しかったの。お祝の席で、母はとても喜んでくれましたが、それ以降は急激に身体は弱り、もうメモを取ることはありませんでした。
それでも宣告から半年は頑張り、昨年春、亡くなりましたが、紅い万年筆が見つかりません。
私は、母が病院のどこかで無くしたのだろうと思いましたが、母と同居していた兄はその時、そのことをとても気にしていました。
それが、一年半たって、遺品のペンケースの中に大事に仕舞ってあったのが、見つかったのだそうです。
短い兄の手紙の行間から、安堵のため息がもれていて、ああ、几帳面な母に性格が似ているのだなぁ、と笑ってしまいました。
なので、これからは私の万年筆。
でも、私はだらしが無いので、すぐに無くしてしまうかもしれません
