羽が折れているのに飛んでいくもの、なに?

 

 第2話終盤でこの回が桃華のバンジー回であることが明かされていましたが、アバンでは漫画版での共演者である道明寺歌鈴と輿水幸子がバンジーに挑む姿が描かれました。

〇 漫画版では、桃華が共演者の二人の姿からアイドルのあるべき姿勢を学び取る描

 写があるのですが、アニメでは二人の描写が桃華にバンジーとは何かを知らしめる

 ためだけに用いられたので、桃華の思考の構成ががらりと変わることとなりまし

 た。

〇 バンジーというと重要な役柄を与えられなくても登場するあたり、幸子さすがで

 す。一部には竹達彩奈さんの無駄遣いとの声もありました。

 

〇 アバンでの描写だけで、桃華の上流社会で育ったことによる世故に暗いところ

 や、見た目に反してアグレッシブな一面も見て取れるのは、キャラクターを大切に

 扱っている感があります。

〇 一方のプロデューサーは、桃華と視線が合っていなかったり、説明に曖昧さがあ

 るなど、この仕事について後ろ暗いところがある様子です。嘘がつけないのはこの

 プロデューサーの良き特徴でもあるのですが。

〇 桃華にバンジーのオファーが来た理由は、漫画版ではここでのプロデューサーの

 説明どおり「あえてバンジーとは無縁そうな子に飛んで欲しい」というものでし

 た。

〇 続くプロデューサーと課長のお酒の席のシーンで、桃華の出演は会長の指示があ

 ったこと、番組のスポンサーが櫻井グループであることなどが明かされ、大人の思

 惑が少し複雑に絡まっていることが明かされました。

 

 さて、収録会場となるバンジーは、漫画版のものより大掛かりなところが用意されました。これが突っ込みどころが満載です。

〇 雷神大吊橋の元ネタは常陸太田市の竜神大吊橋です。竜神湖の湖面から橋上まで

 約100mといいますから、随分な高さですね。なお、ここでのバンジーは15歳

 以上という年齢制限がありますので、本来なら桃華達は飛べません。

〇 収録にはありすが希望して帯同しています。アバンからこの収録や桃華のことを

 心配している風情でしたのですが、プロデューサーはそういうところにも鈍感です

 ね。

  なお漫画版では、準デビューが決まって初めての仕事だったこともあり、レッス

 ンを終えた12歳組全員が現場に駆け付けました。

〇 番組ディレクターが俗物でいやらしい感じに描かれていますが、漫画版での彼は

 大雑把なところはあるものの、第3芸能課には好意的で、アイドル達の現場での評

 判を下支えしてくれている人物の一人です。そういえば、第2話のカメラマンは漫

 画版とは別人でしたが、漫画版のカメラマンも番組ディレクター同様の第3芸能課

 の味方として描かれています。

 

〇 真夏に熱い紅茶を供されて嫌な顔もしない桃華は流石です。スポンサー企業の令

 嬢とその他大勢の扱いの差が大人社会のいやらしさですね。

〇 まず撮影会場として登場する笠森寺は、千葉県所在。竜神大吊橋とは同じ場所に

 あるわけでないけれど、こちらはそのままの名称で描かれています。

〇 進行役のレポーターの登場シーンは、錦鯉の長谷川さんリスペクトでしょうか。

 

〇 桃華にテンプレ嫌味な令嬢役をディレクションするのは悪趣味。でも嫌な表情一

 つせず撮影をこなす桃華は腹を括っているというか…。ありすの言うとおり、桃華

 はあんなこと言わない感でいっぱいになりますが、初見の方はあんな子と思われて

 しまうのじゃないかな。あと、桃華は表情もちょい悪ぽくて、演技が上手な様子で

 すね。

 

〇 全話通じて「ありすの顔芸」が持て囃されましたが、それが顕著に意識されたの

 はこの回でした。

 

〇 このあとの、番組ディレクターのバンジーを飛ぶときは怖がってというディレク

 ションは、嫌みな令嬢っぷりで視聴者に反感を植え付けておいて、バンジーでの哀

 れな姿に留飲を下げるというのを狙っているんですね。いやな構成ですが、ディレ

 クターとしてはよく計算したものと言えるでしょう。

 

 さて、桃華出演の経緯もあってか、プロデューサーは桃華に積極的な指示等は行わず、ディレクションにも文句を言わず見守っていましたが、バンジーを子供らしく怖がってというディレクションに対する疑問を桃華が口にした時から態度が変わってきます。そしてここで恒例の瞳の描写。

 

〇 漫画版でもアニメでも、桃華は一貫して気高いお嬢様、しかもお高く留まったの

 ではなく、高貴であるからには高潔であるべきというノブレス・オブリージュを体

 現しています。しかし、ゲーム版では気位とはして、子供らしい失敗等も犯してい

 て、U149での桃華は理想形態と言われたりします。あと、プロデューサーへの愛

 情が深いのもゲーム版桃華の特徴です。

〇 番組やファンの要求に応えて振舞おうとする桃華は、やはりアイドルとしての責

 務を念頭に置いていますね。

〇 座禅のシーンで住持が語る「分別から離れ」というのは、仏教において分別とは

 主観に基づく差別相対の認識に過ぎないため、物事の本質を主客の差を超越して見

 極める智慧が必要とする考え方によるものです。エンディングで住持が桃華のバン

 ジージャンプの映像を合掌して見守っているのは、桃華が彼女なりに分別を超えた

 無分別智により真理を垣間見た、と評価した故でしょう。

 

〇 これから100mのバンジーを飛ばねばならない女の子の疑問に、それまでは大

 人社会の都合に身を任せようとしていたプロデューサーが放っておけなくなって、

 なんとか桃華に助言しようともがき始めるのは、彼の人柄の良さを表していて素敵

 だと思います。

〇 それでも、今まさに飛ぼうとする桃華を目の当たりにしながら、がんばれとしか

 声をかけられないのは、第2話で「ひとりはさびしいでごぜーますよ」と言った仁

 奈に適切な対応をとれなかったことのリフレインでもあり、彼の奮闘の開始の号砲

 でもあるのです。

〇 まさに飛ぶ間際に、それまでの笑顔が消えて桃華が動揺したのは当然として、自

 らを映すカメラの存在に一層心を揺らしたのは、桃華が他者からの視線、換言すれ

 ば自らがどう見られているかを大切に思うアイドルであるからです。曖昧な気持ち

 で、台本どおり、ディレクションどおりの姿を視聴者に曝すのははたしてどうなの

 か、高潔であるためには責任を果たさなくてはということを桃華は考えざるを得な

 いのです。

 

〇 このぎりぎりのタイミングで、プロデューサーがなんとか待ったをかけることが

 できたのは上出来でした。このまま桃華を飛ばせては絶対にいけなかった。

〇 ペットボトルの水をラッパ飲みする桃華。普段ならけっして見せない姿。

〇 すぐにでも撮影再開しようとする桃華。これはこれで責任感ある姿なのだけど、

 その実まだどう飛べばよいのかという答えは得られていない状態です。

〇 桃華への助言のため、自らバンジーに挑むことを申し出るプロデューサー。桃華

 が責任感を持ってアイドルとして振舞おうとするなら、プロデューサーも責任感を

 持ったプロデュースをしない訳にはいかない。

〇 プロデューサーのジャンプは格好良くなくて、その後の怖がりようも情けなかっ

 たけれども、桃華にきちんと助言したいという思いや良し。

 

〇 がんばれしか言えないのは俺も嫌だからな、というプロデューサーの言葉に微笑

 む桃華。プロデュースの姿勢は信用されている。

〇 子供らしくとかいうのは全部放っといて、櫻井さんらしく飛べばいいというディ

 レクションは、住持の分別から離れ今を生きましょう、本当の貴方らしくという言

 葉に通じるものがあります。

〇 プロデューサーと桃華の対話で、プロデューサーに言葉に否定的な態度をありす

 が引き取ることにより、桃華がプロデューサーの言葉を受け入れ、自らの振る舞い

 をどうするべきかを想定する姿がより鮮明に描くことができたと思われます。漫画

 版では桃華自身がプロデューサーに突っ込みを入れざるを得ないので。

〇 挿入歌の無重力シャトル、バンジージャンプの様態と愛することを重んじる桃華

 にとって天才的な選曲です。橘さん、愛の告白をしそうな勢いでしたね。

 

〇 そして飛び立つ直前の桃華の言動は、この回のカメラの前で最も桃華らしい姿で

 す。そして、落下する桃華の背後の水面の描写も、このアニメの水の描写の上手さ

 に違わぬものでした。

〇 飛び終わっての笑いながら涙を浮かべて「怖かった」のシーンは、漫画版ではカ

 メラに抜かれますが、アニメではカメラは回っていなかったようでした。

〇 番組ディレクターさん、撮影終了後に「また次の機会があったら」と思わせぶり

 な発言でしたが、Blu-ray特典の雪美会でも彼の番組への出演が描かれているので、

 その後も起用し続けてくれているのですね。

〇 プロデューサーが大人の事情からこの仕事を受けたことを桃華に謝ろうとした

 際、桃華はそれを制するのが流石だなと思わせます。なお、この時の桃華は画像チ

 ェックしていたノートパソコンを開いた両足の間に置いて立ち上がりますが、一部

 の桃華Pからは彼女はそんなはしたないことはしないと声が上がっていました。

〇 桃華に桃華らしくない演技をさせてしまったことに忸怩たる思いを抱くプロデュ

 ーサーに対し、私はこのようなキラキラとした景色が見たくて、自分でここに来た

 のですと返す桃華はなんと格好の良いことか。

 

〇 撮影中から声援を送っていた女の子は、しゅがみんTVで桃華を知ったファン第1

 号ですね。

〇 アグレッシブな桃華を支えようとするプロデューサーが桃華のお眼鏡にかなうの

 は、ゲーム版、漫画版通じて同様なのです。

〇 おかーさあああんと叫びながら飛んだありすの姿は、いつぞやのクソコラグランプリを彷彿とさせました。

〇 エンディング前の桃華とありすの絡みは、漫画版単行本第1巻特装版付属CDに収

 録されたボイスドラマがもととなっています。

 

 エンディングは撮影風景とみんなとの鑑賞会。映像を見ているありすと梨沙の表情が微妙です。

〇 住持が映像を見ているシーンについては上述しました。

〇 エンディング曲には桃華のソロ曲2曲目の「愛の讃歌」が用いられました。これ

 はソロ1曲目の「ラヴィアンローズ」がプロデューサーへの愛に溢れすぎているか

 らでしょうね。

 

 サブタイトルのなぞなぞの答えは「紙飛行機」ですね。漫画版では、紙飛行機が重要なアイテムとして扱われるエピソードがあり、関連イベントでもキャストさんたちが紙飛行機を飛ばしたことがありました。