アニメU149 第1話 「鏡でも見ることができない自分の顔って、何?」
冒頭、ありすの夢の描写から始まります。13個の蝋燭型の電球が備わったシャン
デリアの灯りが次々と9つ点ります。壁にはたくさんの時計と鏡が、そして部屋中に
は様々な色のリボンが張り巡らされています。
〇 13個の電球は、U149において主人公として登場する13人の小学生アイドルを
象徴、そのうち9個が灯るのは、このアニメで活躍する初期メンバー9人を表して
います。
〇 壁に掲げられた時計は、言うまでもなくシンデレラのモチーフです。また、鏡は
この場面で登場しているありすには、「鏡の国のアリス」という作品で縁が深いも
のです。
〇 張り巡らされたリボンは、いくつかある外につながるドアに結びついています。
中にはありすの背丈では出入りできないような大きさのドアもありますが、これも
「不思議の国のアリス」で描かれるドアを連想させるものです。
そんな夢の中から目覚まし時計の音で現実に目覚めるありすです。ダイニングキッ
チンでは両親が朝の支度をしていますが、ありすはそれを見守るだけ、両親は自分た
ちの支度や仕事の連絡を済ませると家を出ます。その際に母親が「今日は早く帰って
こられるかもしれない」と告げると、ありすは嬉しそうな表情をします。両親が出立
した後、ありすは身支度をして朝食を摂り、登校します。
〇 壁にはありすの写真がいくつも飾ってあり、両親がありすを愛しているのは紛れ
もない様子です。
〇 慌ただしい朝ですが、両親とありすは食事を共にしようとはせず、どこかすれ違
いがある様子です。
〇 ありすがトーストにいちごジャムを塗っているのは、彼女らしいですね。
登校したありすと同級生たちのやり取りからは、次のようなことが読み取れます。
〇 この日は、彼女たちの学校の終業式で、夏休みが始まるらしいこと。
〇 彼女たちは中学受験を控えているらしいこと。
〇 ありすは同級生にアイドル活動をしていることを話していた様子ですが、その内
容はいささか見栄を張ったものだったようです。
学校を終えたありすは電車で芸能事務所に向かいます。車内の吊広告にニュージェ
ネレーションズの姿があり、それを見上げる姿は、漫画版でのライブ会場を見上げる
姿に通じるものがあります。
一方、事務所では荷物を運び込む様子が描かれ、湯沸室と思しき所で部長、次長、
課長の面々が何やら話している様子です。曰く、会長の思いつきで始まった新プロ
ジェクトについて、部長たちは快く思っておらず、関りを避けたいようです。コー
ヒーの空缶を灰皿代わりに喫煙する様子が妙にリアルで話題になったシーンでもあり
ましたね。結局、このプロジェクトを世話するプロデューサーの人選は、この場の末
席であった課長に押しつけられたようです。
〇 影を多用して描かれた部長たちは、明らかに主人公たちの行く手を阻む存在とさ
れており、シンデレラの物語でいう継母や異母姉たちのポジションとなります。
〇 喫煙シーンは、これまたシンデレラの物語で主人公たちが灰かぶりであることを
示唆します。
そして、われらがプロデューサーの登場です。どうやら打ち合わせで他社を訪問し
ていたようですが、このビルはCygamesの入っているビルだそうですね。次の訪問先
に移動する際に課長からの電話を受け、プロデューサー就任を受諾します。
〇 漫画版ではお馴染みの米内Pですが、若くて場数もまだまだだけど、やる気と情熱
は本物というタイプです。ここで入社3年目という経歴や、プロデューサー就任を
即時報告するくらい仲が良い姉がいることが明かされました。
一方、事務所に向かっていたありすは、エレベーターの前で課長たちに出会い、そ
のまま会長肝煎のプロジェクトである第3芸能課への配属を打診されます。その後の
レッスンルームでのルーキートレーナーとの会話からありすがこのことを、自らのア
イドル活動が具体化するものとして喜んでいることが解ります。
〇 このほか、ありすが両親を立派に仕事をこなしている社会人として尊敬している
ことが語られますね。
方やプロデューサーも新しい部署の準備中の課室で、これからのプロデュースのこ
とを想像しながら期待に胸を膨らませていました。このあたりの心境は、ありすとプ
ロデューサーが相似に描かれていますね。様子を見に来た課長は、夕空を見つめなが
ら期待を述べるプロデューサーの瞳を見て、この役目を押し付けたことに少し引け目
を感じている様子です。この瞳の描写は、各話を通じて繰り返し描かれていくことと
なります。
〇 プロデューサーが新部署の所属アイドルを知らず、この時も課長に問いただして
いないのは何故でしょうね。ありすも急遽所属を勧められたみたいなので、まだこ
の時は全員揃ってもいなかったのかもしれませんね。
〇 プロデューサーの好みのアイドルが三船美優なのは漫画版に同じですね。
プロデューサーは昇進祝いと称して、課長と夜の街へ繰り出すのに対し、ありすは
家路を急いでいました。朝、母親が早く帰れるかもしれないと言っていたこと、会長
肝煎の部署に所属することとなったことを共に喜んでもらいたい、などの気持ちが
あったのでしょうね。
ところが、玄関を開けるとダイニングの灯は消えていて、両親はまだ帰宅していな
いことが解ります。
〇 全話を通じて水の描写が素晴らしいのですが、橘家の玄関に置かれた金魚鉢も例
外ではありません。但し、朝には爽やかに見えた金魚たちも、夜には少し不気味に
も見えます。勿論、ありすの心が母の不在という理由で沈んでいるせいでもありま
すが。
やがて帰宅した母親に、第3芸能課への所属について訊ねるありすですが、その反
応はありすが期待したように共に喜んでくれるものではなく、勉強の邪魔にならない
なら自由にしてよい、というものでした。浮かない顔のまま先に寝るねと自室に入っ
てしまったありすを少し気にかけ、おって帰宅し父親との食事中に、ありすが自分た
ちを避けていないかと話し合うのですが、勿論ありすが両親を避けているのではなく
ため、この会話は尻つぼみとなってしまいます。
〇 ありすは、両親に自分にもっと寄り添って欲しいと感じている反面、自分を否定
されることを恐れてもいるため、関係がちぐはぐとなっています。これは、デレア
ニ8話におけるプロデューサーと神崎蘭子の関係に似ています。蘭子はグリモワール
に記した自らのコンセプトをプロデューサーに説明して解って欲しいと願っていま
すが、その考えを否定されるのが怖くて近づけないでいました。プロデューサーも
蘭子の言葉を理解できないため避けられていると思っていましたが、渋谷凛の「蘭
子は避けていない、もっと蘭子に近づいてみて」という助言で不器用な二人が歩み
寄り、ROSENBURG ENGELのコンセプトが決まりました。
〇 ありすが意味深に、保護者同意書を見つめるシーンがありましたが、同意書自体
は書いてもらえたようですね。
日が改まって、第3芸能課の顔合わせの日。晴と薫がサッカーボールで遊んでい
て、桃華と梨沙に注意されるという流れは、漫画版0話に準拠しています。漫画版
ではその後、みりあがプロデューサーが決まった旨を聞きつけてみんなに報告する
のですが、アニメではそこは自明のことだったようですね。みりあの私たちのプロ
デューサーってどんな人だろうとの問いに、各自それぞれの思いが述べられるのも
漫画版準拠です。ありすが「ありすと呼ばないでください」というエピソードを挟
んで、漫画版1話にあるプロデューサー捜索隊。突如画風がコミカルになるのが可愛
いですね。
〇 桃華たちに注意された際、漫画版では薫は特に反応を示していなかったのです
が、アニメではしゅんとしてメタモンみたいな表情になっていました。
〇 プロデューサーに望むもの
梨沙:カッコいいおとなの人
桃華:スマートで誠実な方
小春:王子様みたいな人
仁奈:優しい人
ありす:仕事ができるちゃんとした大人の方
プロデューサーは初見で躓いていますね。もっとも、付き合いを重ねていくうち
に、彼の優しさや誠実さは解ってきますし、仕事ができるかはともかく、前向きに
頑張る人ではありますよね。
〇 漫画版では、ありすがファーストネームで呼ばないでと指摘するのは晴に対して
くらいで、年少組に対してはあまり指摘や訂正をしていない様子です。小春が呼ん
だ際には「橘です」と訂正したりしていますが。
〇 プロデューサー捜索隊は、漫画版ではもっと派手に衝突事故していますが、アニ
メではよりコミカルに、よりふんわりぶつかっています。
ありすがプロデューサーを信用できず、事務所に交代を依頼に行くという展開は、
漫画版では異なっていました。でも、折角着任したプロデューサーがいなくなること
を薫と仁奈が止めようとするのは漫画版と同じ展開です。ここは第3芸能課が動き出
す、序盤屈指の山場ですね。
〇 漫画版では、言いたい放題のありすや梨沙の言動に閉口し、半ば物置状態だった
課室の片づけもせねばと思い立ったプロデューサーが事務所に経費の相談に行こう
とするのを、辞任してしまうのではないかと誤解したアイドル達のうち、年少パッ
ション組が走り出すという展開です。
〇 厄介なプロジェクトを押し付けた経緯から、ありすが事務所にお願いしてもプロ
デューサーの交代はなかったでしょうね。漫画版では関係性が構築された後、アイ
ドル達がこのプロデューサーで良かったと回顧・述懐するシーンがたびたび描かれ
ます。
〇 「かおる達のプロデューサーになるの、いや?」という問いかけの大切さに、こ
こまで薫にまとまった台詞がありませんでした。直前にプロデューサーが「頭を整
理する時間をくれないか」と発言していますが、この問いかけで一自分がどう行動
すべきか、一挙に整理出来たろうと思えます。
〇 仁奈にとって大人に置き捨てにされるのは恐怖です。それを知る視聴者にとって
胸を締め付けられるシーンであり、いやだって言ったら赦さないと思った方が多か
ったことでしょう。
〇 「いなくならないで」はドレミファクトリー!歌詞からの逆輸入です。
なにはともあれ、ぎくしゃくしながらも第3芸能課の船出です。アイマス恒例の自
己紹介を経て最初のレッスンへ。みんなありすの歌唱に聞きほれていましたね。
〇 梨沙は不満たらたらですが、まだプロデューサーとアイドル達の相互理解ができ
ていない中で、一足飛びに大きな仕事が来ることはないですよね。
アイドル達を駅まで送る道すがら、ありすとのコミュニケーションをとるプロデュー
サー。プロデュースへの思いを語るその姿に、ありすもようやく彼をプロデューサー
として受け入れることができるようになりました。
〇 キービジュアルでもある階段は、渋谷宮益坂にある宮益御嶽神社の参道です。
〇 ここでも、プロデューサーの瞳の描写がありました。
〇 デレアニ7話にて、プロデューサーが卯月の笑顔に後押しされ、自宅に引き籠った
未央を迎えに駅まで急ぐシーンで、この階段の前を通っています。
〇 ありすがプロデューサーの服装を注意して、ネクタイを締めなおすのは、デレア
ニ14話の常務のオマージュ。できる女はありすの母親像でもあります。
〇 プロデューサーの誘いに応じ、ありすが階段から飛び降りるシーンは、いくつも
のイメージが重なっています。背後のビルのガラスにありすの鏡像がいくつも重な
るのは鏡の国のアリスからか。
〇 ありすが着地したところで新しい世界が開き、ありすがお城への階段を昇り始め
るのは、まさにシンデレラのイメージです。なお、階段を飛び降りたのに昇り始め
たのは、ジョジョの奇妙な冒険におけるポルナレフが語る体験の逆と言われていま
したね。
アイドル達を駅まで送り届けたプロデューサーは、事務所に戻って企画書を書こう
と思っていましたが、偶然出会った課長に捕まって夜の街に繰り出す羽目となりまし
た。
〇 課長の行動は、プロデューサーの仕事を邪魔しているのか、それともプロデュー
サーのことを目にかけているからか、ここだけでは判断しかねます。
〇 酔っぱらってお願いシンデレラを唄うプロデューサーと、その歌を途中から引き
取り、口ずさみながら眠りに落ちるありす。まだしっくりとはかみ合わないながら
も、彼らのアイドル活動はここから始まるのです。
突如として始まったエンディング曲よりみちリトルスターは、歌詞、アニメーショ
ンともにシンデレラをモチーフとしていますが、「この靴をこの足でぴったり履ける
うちに」という歌詞がキッズアイドル達のひと夏の輝きを如実に言い表しています。
〇 構成上、第3芸能課のアイドル達のライブシーンが見られるのが随分先になって
しまう中、この曲のアニメーションは視聴者を癒してくれました。
因みに、サブタイトルのなぞなぞの答えは「寝顔」ですね。