普段、乗らない電車に乗った。


時間帯もあって、


ガラガラであった。


中年の主婦、学生、営業マンらしきサラリーマンが、


ぽつりぽつりと乗っていた。


あたしは、ひとつの席に、


悠々と乗っていると、


日差しがとてもまぶしかった。


カーテンをしめようとしたが、


なかなかうまく、とまらない。


ガタガタやっていると、


いちばん端に座っていた、


営業マンらしいサラリーマンが、


にこやかに笑い、


助けてくれた。


カーテンが無事にしまり、


あたしは、「ありがとうございます」と


ほほえむと、


その男性も、ニコリとほほえんだ。


男性が次の駅におりるとき、


あたしにふと紙きれをさしだした。


あたしは、眠りからさめ、


見上げると、男性は、「では」とその場を去った。


その紙きれは、めしではなく、名刺だった。


あたしは、ぎゅっとにぎりしめ、


名刺いれに、大事にしまい、


その男性をおいかけた。


ひたすらおいかけた。


目で。


ホームの人ごみに消えていった・・・