「恋しくて...」
*17*
翌日、A.N.JELLは終日オフで自由行動だった。
ジェルミとミナムは、自由の女神を見に出掛けた。
シヌは、美術館とカフェ巡り。
ワンコーディーはショッピング。もちろん、荷物係(マ室長)をお供に連れて行っている。
テギョンは、朝からセントラルパークをジョギングしていた。
昨日、撮影終了後、お邪魔虫(ミナムとジェルミ)が去ったあと、テギョンは、さりげなくミニョを呼び、その手を握り、引き留めていた。
握られた手を見つめ、ミニョが慌てて、辺りをキョロキョロと見回すが、撮影スタッフたちは、仕事に集中して誰ひとり、ふたりのやりとりには気付いていないようだった。
「コ・ミニョ、明日、仕事が終わったら、ここに連絡しろ」
テギョンの手には連絡先が握られていた。
「え、あ、あの、いつ終わるか、わかりませんよ?」
念を押すように、テギョンは構わずミニョの手を引き寄せると、すでに真っ赤になっているミニョの耳元に唇を寄せる。
「話したいことがあるんだ。いつでも待っているから、必ず、寄越せ、わかったな?」
ミニョは、顔を真っ赤にしながらコクンと頷いていた。
あと2日で、テギョンたちは韓国に帰る。
これからのことをミニョと話し合うため、テギョンは、ミニョに連絡先を渡した。出来れば、
一緒に帰国したいとテギョンは、考えていた。
どうやって、ミニョを説得させるか、自分ではない、あの男(ソンミン)のそばに置くことが、不安で仕方ないし、何よりイラつくのだ。
自ずと、テギョンの口が尖りムニムニと動いている。
イラついた心を鎮めるため、テギョンは立ち止まり、持っていたペットボトルを口にした。
ふと、考える。
音楽のこと以外のことを考えるのは、いつぶりだろうか?
これまで、ミニョのことは、考えないようにしていた。思い出すたびに、胸が痛み、後悔ばかりが押し寄せた。だから、思い出さないように、心に厳重に鍵をかけ、心の奥に閉じ込めていた。
しかし、ミニョとの再会により、厳重にかけていた鍵は音もなく外れ、ミニョに対する気持ちが心から溢れていた。
そして、溢れた想いをもう一度、ミニョに伝えたことにより、テギョンの心は満たされはじめていた。今度は、満たされたものが零れ落ちないように鍵をするだけだ。
その鍵が使えるのは、やっぱりミニョだけだ。
ん?曲が、一曲出来そうだな?
尖っていた口が、今度は、ニヤリと片方だけあがる。
フンフンと鼻歌を歌いながら、テギョンはまた走りだした。
★★★★
1年ぶりに、久々にハナシ描いた…。
心臓、ドキドキ。何、この緊張感?
こんなカンジで、良かったんだっけ?