「恋しくて…」
*5*
「え、え、あ、あ、あの・・ソンミンさん・・・」
ソンミンは、狼狽えているミニョの肩を組んで、ミニョにニッコリと笑ってみせる。
「オ、オ、オットケ・・・」
ミニョは真っ赤になりはじめた頬を両手で挟み、さらに狼狽えている。
「おいおい、待てよ・・確か、ミニョssiは、シヌと付き合っていなかったか?」
アン社長は困惑顔で、シヌを見る。
シヌはミニョと視線を合わせ、一瞬だけ微笑んでみせると、すぐに、冷静な顔で首を振った。
「いいえ、付き合ってませんよ。」
「付き合ってないって、交際宣言したじゃないか・・・」
「あのとき、ナラ日報のキム記者が、執拗にミニョを追い回していたんです。一般人のミニョを匿うためには嘘をつくしかなかったんです。俺にとって、ミニョは妹みたいにかわいい存在ですから、兄が、妹を守るのは当たり前ですよね?」
アン社長に、ニコッと笑ってみせるシヌに、ミニョはホッと胸を撫で下ろす。
「それなら、ノープロブレムだな。」
豪快に笑うアン社長と肩を組んでいるふたりを、テギョンは不機嫌そうな顔で見ていた。
そのあとは、撮影の打ち合わせをして、食事を終えた。
「では、皆さん、明日からよろしくお願いします。」
メンバーたちは、レストランからほど近いホテルに泊まっているため、徒歩で帰るが、ソンミンとミニョは、タクシーで帰る。
ソンミンはタクシーを呼び、ミニョをタクシーに乗せ、ソンミンも乗り込む。
タクシーでふたりきりになるが、ミニョはなんとなく気まずくて、窓の外をキョロキョロと見ている。
「で、誰と付き合っていたんだ?」
「は、はい?」
「カン・シヌ?それとも、ファン・テギョン?」
「・・・いいえ、誰とも、付き合っていませんよ。」
ミニョは、静かに首を横に振った。
テギョンとは、恋人関係になる前に、別れてしまったのだから・・・。
それは、一瞬だけ咲いて、すぐに散ってしまった花のように、儚い夢のようなモノだった。
寂しそうに目を伏せたミニョの長い睫毛が揺れる。
「どうして、そんな悲しそうな顔をするんだ?お前は、笑顔を見せるが、本当に心の底から笑っていないように見える。」
「・・・そうですか?笑ってますよ、ちゃんと。」
「じゃあ、誰と付き合っていなければ、俺と付き合ってくれるな?」
ソンミンは、真剣にミニョを見つめながら、ミニョの手を握った。
「そ、そ、それは・・・」
また狼狽えながら、視線を外すミニョに、ソンミンは深い溜め息を吐いた。
「な?出来ないだろ?お前、まだ、引き摺ってるんだよ、その恋を。
俺と一緒にニューヨークまで来て、逃げても、結局、また、会っちまったんだ。
その恋を、もう一度、始めることも、そのまま、終わらすことも出来るんだ。
だから、自分のためにも、もう一度、ちゃんと、向き合え。わかったな、コ・ミニョ?」
すべてお見通しのソンミンに、ミニョは降参したかのように、涙で濡れた顔を手で覆った。
翌朝
撮影の準備をしていると、メンバーたちが現れる。
「ミニョ、おはよ~」
「おはようございます。よろしくお願いします。」
ミニョは、頭を下げる。
メンバーたちは、すでに衣装に着替えていた。
ミニョの視線が、黒のスーツを着たテギョンに向かう。
忘れることの出来なかったヒト
忘れることの出来なかった恋
星が、また、目の前で輝きだす。
★★★★