「恋しくて…」
*2*
ニューヨークの撮影スタジオ
長身の外国人モデルがポーズを変えるたびに、シャッターの切る音が鳴り響く。
「コ・ミニョ、早くしろ!!」
「はい、すみません!!」
カメラのファインダーを覗いたままのソンミンが急かす声に、アシスタントを務めるミニョが急ぎ足で戻ってくる。
今、ミニョは、ソンミンのアシスタントをしながら、ニューヨークで暮らしている。
韓国を離れ、2年の月日が流れようとしていた。
ミニョがニューヨークに来て驚いたのが、ソンミンが有名なフォトグラファーだったこと。ニューヨークに事務所兼スタジオを構えていた。何人か、事務所で働いていたが、アジア人は、ミニョとソンミンだけ。
ソンミンの言葉どおり、アシスタントという仕事は、体力的にハードな仕事だったが、衣食住はしっかりと面倒を見てもらっていた。
治安のいい場所にアパートを借りたが、家賃が高いため、アパート代の半分はソンミンが出してくれているし、給料も払ってくれているため、食にも困らない。服は古着屋で安く買っている。ソンミンに、よく「ダサイ」と笑われていたが、前よりもオシャレになった気もする。
英語も日常会話は出来るようになっていたから、だいぶ、ニューヨークの暮らしにも慣れてきたところだった。
「ミニョ、今日は、コリアンタウンでメシ食べるか?」
「そうですねぇ~、だいぶ寒くなってきたから、そろそろキムチチゲが食べたいですねぇ~」
仕事中は、ピリピリと緊張感のある関係だが、仕事が終われば、笑い合う親しい間柄に戻る。
最初は、慣れない仕事で、相変わらず粗相をして、ソンミンに叱られてばかりだったが、持ち前の根性でなんとか乗り越えてきた。
ソンミンもミニョの根性を認めていたし、何より、ミニョの素直で純粋な性格に好意を抱いていた。
コリアンタウンでご飯を食べた後、ソンミンと別れ、赤いレンガのアパートに帰る。
すでに家具が付いており、ミニョは、トランクひとつでニューヨークに渡った。
窓の外に広がる眠らない街を眺めながら、後ろで結わえた髪を下ろす。
アフリカにいたときはショートヘアだった髪が胸あたりまで伸び、流れた年月を物語っていた。
眠らない街の夜空には、星は見つけられない。
それなのに、ミニョが夜空を眺めてしまうのは、今は見えないあの大好きな星を、無意識に探してしまっているからだろうか・・・

そして
ニューヨークの街に雪が散らつく頃、ソンミンの事務所に一本の電話が入った。
「おじさん、久しぶりですね。
元気でしたか?
はい?仕事依頼ですか?
『 A.N.JELL』の写真集を撮ってほしい?
『A.N.JELL』てなんですか?
おじさんの事務所?
韓国のアイドルグループ?
わかりました、いいですよ。
大事なおじさんの頼みですから。
ニューヨークと韓国で撮影ですね。
先にこちらに来ていただけるんですね。
あとは、メールでスケジュール送りますよ
はい、こちらこそ楽しみにしています。
よろしくお願いします。」
★★★★
ソンミンのおじさん、わかりましたね?
ソンミンは社長のお姉さんの息子という設定です。社長にお姉さんがいるか、どうかもわかりませんが、あくまでもオリジナル設定です。
これで、再会になりますが、 次回は、一度、テギョンさんの様子を見るとしましょうかね(笑)