「恋しくて…」
*1*
ミニョがアフリカに来て、半年が経とうとしていた。
ミニョは、今、病院でボランティアの仕事をしている。ミニョは医療の資格は持っていないので、患者の介助をしたり、病院の雑務をしている。
持ち前の根性で、体力的にキツイ仕事もこなしていたが、もうひとつ言葉の問題があった。
ミニョは、少しの英語とボディーランゲージで周りとコミュニケーションをとっていた。夜は、病院の寄宿舎で過ごし、疲れた身体を休ませることなく、眠い目を擦りながら、もっと、地元民とコミュニケーションをとれるために、その国の言葉と英語を勉強をして、夜遅くに眠りに就いていた。
そして、寝坊しても許される休みの前の夜は、星を見上げていた。
星を見上げるたびに、思い出すのは、眩しいくらいに輝いていた星のことだった。
そして、一度だけ一緒に星空を見た日のことを思い出す。

今、横を見ても、一番見たい星はいない。
「今日もいっぱい星が出てますけど、やっぱり、大好きな星が見えません・・・テギョンさん、やっぱり、もう一度、会いたいです。」
ミニョは涙を流しながら、自分の横にはいない、テギョンを思い出していた。
そして、一年が経ち・・・
今も変わらず、星を見上げるミニョの姿。もう少しで、ミニョのボランティアの任期が終わろうとしていた。
一年経っても、テギョンへの思いは変わらない。
任期が終われば、会いにいけるのに、ミニョには、勇気がなかった。
会って、どうすればいいんだろう・・・
テギョンさんは、もう、吹っ切っているかもしれない。
「なぜ、会いにきた?」
と、あの冷たい目で見られてしまえば、きっと、耐えることが出来ないだろう・・・
「どうしよう・・・帰れないよ」
「帰れないって何処に?」
「きゃッ!?ビックリしたぁ・・・ソンミンさん、驚かせないでくださいよ・・・」
突然、耳元で聞こえた声に、ミニョは身体を飛び上がらせた。
「で、何処に帰れないの?韓国に帰れるんだろ?家がないのか?」
ミニョに色々と聞いてくる、この『ソンミン』は、つい1ヶ月前にフラリとやって来たフリーのフォトグラファー。
リュックとカメラだけを持ち、世界を回っている。
ミニョと同じ韓国人だが、育ちは、アメリカで、ミニョの顔を見ても、『コ・ミナム』と結びつかず、アジア人だと思ったらしく、ソンミンのフレンドリーな態度と同郷で、すっかりふたりは親しくなった。
「・・・帰れる家が、ないかもしれないです。すでに両親は亡くなってますし、兄も別に暮らしてます。それまで、修道院でお世話になってましたから、一度、修道院に戻って、仕事と住まいを探さないといけないかもしれません。」
「帰る場所がなければ、俺のとこ来るか?」
「えっ!?そ、それは・・・」
首をブンブン横に振るミニョ。
「おい、お前!何、変なこと考えてるんだよ?
そんなんじゃなくてな、仕事を与えてやるし、住まいもなんとかしてやる、って言ってんだよ。ただし、韓国には帰れないけどな。俺の拠点は、ニューヨークだからな。」
「そうなんですか・・・?」
「まぁ、少し考える時間くれてやる。
仕事は、体力的にキツイぞ。だけど、衣食住に関しては、心配いらない。面倒見てやる。」
「行きます、一緒に行かせてください!よろしくお願いします!」
★★★★
『ソンミン』オリジナルキャラ登場。
いいヤツですよ。
さて、ミニョ、アフリカ脱出です。
お次は、ニューヨークに飛びます。