イケメン版
「マイフェアレディ」*1*
それは、まだ身分制社会だった時代のハナシ。
ある街の広場には、たくさんの人々が行き交う。
上流階級の紳士淑女から、最下層の者まで、様々だ。
最下層の者たちは、その日暮らしの生活費を稼ぐため、様々な物を売っている。
「花はいらんかね?キレイな花だよ!
そこの旦那、奥さんにどうだい?」
花を両手に抱え、花を売る娘の姿。
しかし、その花を買う者は、誰ひとりといない。
娘の顔は汚れ、手も真っ黒、服も所々糸が解れ、破れた場所には違う布が当ててあり、みすぼらしい格好をしていた。
そんな姿では、上流階級の者などは、況しての他、近寄ることなどしない。
しかし、そんな彼女を、広場のベンチから見つめるひとりの上流階級の若い男がいた。
その若い男は、彼女の姿を見つめながら、持った紙にペンを走らせていた。
そろそろ陽が暮れ、娘が店仕舞いをはじめた頃、その若い男が娘に近付いてくる。
「おい!」
呼ばれた娘は聴こえてないのか、若い男に見向きもしない。
若い男も、娘にあまり近付く気がないのか、娘との距離があった。
「おい!そこの娘!!」
「ん?あたしのこと?お花買ってくれるのかい、お客さん?」
「花は苦手だから、いらん。」
「そうですか、じゃあ、あたしは帰ります。」
そそくさと荷物を持って帰ろうとする娘を、若い男が引き留める。
「おい、待て!!」
「なんですか?」
「俺は、ファン・テギョン。お前を雇いたい。」
「雇う?目的は、あたしの身体?」
娘の顔の血の気が消え、身体を守るように手で抑えながら怯えた表情になっている。
「おい、勘違いするな。俺は、教授だ。
俺の手にかかれば、半年で、お前を上流階級に通用するレディに教育してやることが出来る。明日、小綺麗な格好をして、此処に来い。わかったな?」
テギョンは自信満々に言うと、娘に地図が書いてある紙を渡した。
翌朝、テギョンの家のベルが鳴る。
まだ、起きて間もないガウン姿のテギョンがドアを開けるが、次の瞬間、すぐにドアを閉めてしまった。
「ファン・テギョンさん、開けてください!!
一張羅のワンピースで来ました。顔も手もちゃんと洗ってきました。あたしを素敵なレディにしてください!!」
取り残された娘は、ドンドン、ドアを叩く。
「なんだ、その格好は?昨日と一緒じゃないか?何処が違うんだ?」
「おい、テギョン、開けてくれ!何事だ?この娘は誰なんだ?」
外から新たな声が聞こえ、テギョンは仕方なしにドアを開けた。
「あぁ、マ室長か?」
「この娘は、誰なんだ?」
テギョンの同僚であるマ室長が、丁度、テギョンの家を訪ねて来た。
「コ・ミニョです!」
ミニョも追い出されないように必死で、名前を告げる。
「お前、名前負けまでしてるぞ」
ミニョの顔を見ながら、溜め息を吐くテギョンは頭を抱えている。
「テギョンの例の実験台か?」
「あぁ…だが、見誤ったようだ。」
ヒソヒソ話をするマ室長とテギョン。
「あたしには、帰る家がありません。唯一の身寄りだったおばさんに追い出されてしまいました。精一杯、頑張ります、よろしくお願いします。」
床にまで頭をつけそうな勢いで頭を下げるミニョ。
「テギョン、お前まで追い出したら、可哀想じゃないか?もし、成功したら、俺が、この娘の授業料を支払ってやるよ。それで、どうだ?」
「フン、コ・ミニョ、運が良かったな。
お前の教育を引き受けてやる。訓練は厳しいぞ。逃げ出すなよ」
「ハイ!頑張ります!」
こうして、テギョンによる、ミニョのレディになる教育が始まったのである。
★★☆★