「VOYAGE」
*フィナーレ*
そして、ミニョ王女が旅立ったあのときと同じように、花火が打ち上がる。
あのときと違うのは、ロイヤルシートに、ミナム国王が姿を現し、そのすぐ後ろに、白いドレス姿のミニョ王女の姿があった。
「レディース & ジェントルマン!!
さあ、お待たせいたしました!!
劇団「ANJELL」の人気芝居『星になりたい』の上演でございます!!
ロイヤルシートにご着席されております、ミナム国王もミニョ王女も、観客の皆様も、ハンカチを手にご覧ください。」
舞台上に立ったジェルミが、ロイヤルシートに向かい、笑顔で手を振り、ミニョ王女に、投げキッスを送った。
物語はクライマックスに向かっていた。
主役のテギョンが、ひとり舞台上に立つ。
テギョンが、切なそうに胸に手を当てる。星を見上げながら、もう会えない恋人を想う切ないシーン。
『星になれば・・・この願いは叶うのだろうか・・・』
セリフを喋りながら、見上げたテギョンの視線が、ミニョへと向かう。
身の丈に合わないブカブカのシャツを着たボサボサ頭のミナムが、今は、キラキラと頭の上に輝くティアラと白いドレスが似合う、美しい王女になっていた。
この国を旅立ってから、いつも思い出すのは、お前と過ごした日々だった。
いつも月を見上げるお前の小さな後ろ姿を見ていた。
いつも笑っていて、どんなに辛くても弱音吐かない。
ドジを踏むくせに、突然、スゴイことをやってのける。
俺は、一度も、そんなヤツに会ったことがない・・・
『もう一度、会わせてほしい・・・』
・・・会いたいと思った。
でも、会えなかった。
俺たちは、違う場所で生きているから。
だから、何も言わずに、別れたのに・・・
それでも、どうして、こんなに惹かれるのだろうか・・・
お前が『月』だから・・・?
それとも、俺が『星』だから・・・?
そうだったとしても、俺は・・・
『会わせてくれ・・・愛しの“ミニョ”に!!』
「ミニョ、お前を愛してるんだ!!」
突然のテギョンの告白に騒然となる観客。
「は?欲しいものって、まさか、ミニョ?」
ミナム国王も、あまりの驚きで椅子からずり落ちている。
「おい、ミニョ?どうすんだ?」
ミニョも目を丸くしながら、呆然としてる。
まさか、テギョンから愛の告白を受けるとは思わなかった。
胸が苦しくなる痛さが、恋の痛さだということを、あとで知った。
生まれてはじめて恋をしたのだと、でも、その相手には、もう二度と会えないんだと・・・
その相手との別れは突然だった。
ひとつの場所に身を置かないヒトだから仕方がないと思っても、何も言えなかった自分に後悔と、もう会えない淋しさで涙が溢れ、泣き続けたことがあった。
ミニョ王女が落ちてくる涙を拭うと、意を決したように立ち上がった。
ミニョ王女は、テギョンのいる舞台に向かって走り出す。
旅立ったあのときと同じように、人波を掻き分けて・・・
そして、舞台上にいるテギョンの胸へと飛び込んだ。
テギョンも、ミニョ王女の身体をきつく抱き締める。
観客の度肝を抜くような感動的なフィナーレは、たくさんの歓声と拍手に包まれた。
そして、劇場艇「ルーチェ」は、また旅立っていく。
見送るミニョ王女に、テギョンは、不服そうに口を尖らした。
「本当に、一緒に行かないのか?」
「私は、王女として、この国でやらなければいけないことがたくさんあります。
それに、私が行っても、足手まといになってしまうだけですから・・・」
ハッキリと言葉にしているが、寂しげに微笑んでみせるミニョ王女の頬に触れながら、テギョンは、ミニョ王女の唇に口づけをした。
「あ、あの・・・テギョンさん?」
「少しの間、またお別れなんだから、な。淋しくならないように、おまじないだ。」
ミニョ王女は、驚いて目をキョロキョロしているが、お構い無しにもう一度、近付いてくるテギョンの唇に、ミニョ王女はギュッと目を閉じる。
まるで別れを惜しむように、ふたりは長い口づけをしていた。
「ねぇ、シヌヒョン?
テギョンヒョンの欲しいお宝ってさ・・・」
「ん?手に入ったみたいだな。」
「オレも欲しいな。テギョンヒョンみたいなお宝。」
「それは、難しそうだな。一体、何回、世界を回れば見つかるんだろうな?」
「シヌヒョン!?」
劇場艇「ルーチェ」は、真っ直ぐに進んでいく。
それは、一筋の光のように・・・。
どうか、彼らの旅路に、幸多からんことを・・・
水平線へと消えていく船を見送るミニョ王女が、胸の前で手を組み祈る。
「いってらっしゃい。
また会える日まで・・・。」
★★Fin★★
最終話が長くなりまして、2回更新になりましたが、これにて、完結でございます。
裏話は、またあとで書きます。くだらないハナシですが、よかったら読んでください。
とりあえず、今年中に終わって良かった( ´∀`)
久々のハナシでしたが、お読みいただき、本当にありがとうございました。
それでは、また会える日まで( ´∀`)/