「Secret moon」*34*
「誓い」
ミニョに断れ、留守番しているように言われていたテギョン。
いくら『大丈夫です。心配しないでください。』と、病み上がりで、身重で、しかも、危なっかしいミニョに言われても、納得できるわけでもなく、結局、居ても立ってもいられず、教会に出向いていた。
中に入ると、ミニョにすぐに気付かれてしまうため、結局、教会の庭のベンチに座っていた。
すると、教会から、ひとりの青年が出てくる。
少し背の小さい青年は、栗色の髪を揺らし、黒のライダースジャケットのポケットに手を突っ込んでいる。腰に巻いたチェックのシャツを垂らし、穴だらけのジーンズ、黒のゴツいブーツを履いている。
教会で礼拝するには、不似合いな格好の青年が、目にかかる前髪をかきあげた時、テギョンは息を呑んだ。
その青年の顔が、ミニョと瓜二つだったからだ。
テギョンは、驚きで目を丸くしながら、自分の前を通り過ぎる青年(ミナム)をマジマジと見ていた。
そして、ひとりのシスターが、ミニョと一緒に教会から出てくる。
シスターは、泣いているミニョの背中を、微笑みを浮かべながら、何度も優しく撫で、ミニョの涙を拭った。
最後に、優しくお腹を撫でると、頭を下げ、ゆっくりと歩き出した。
そして、ベンチに座っているテギョンと目が合うと、会釈をした。
シスターの慈愛に満ちた優しい眼差しが、テギョンを見透かしているような気がして、テギョンは驚きながらも、頭を下げた。
そして、テギョンは、ベンチから立ち上がり、教会の扉の前に立ち尽くすミニョの元へ行く。
ハラハラと涙を溢すミニョに、テギョンは、優しく、濡れた頬を包み込んだ。
「テギョンさん・・・?」
テギョンは、優しい眼差しを向けながら、ミニョの濡れた頬を、優しく拭う。
「このままだと、冷えてしまう。身体に障るから、中に入ろう・・・」
ミニョの肩を抱くと、教会に入り、ジェヒョンの元に行く。
「・・・お願いがあります。
ミニョと、神の前で誓いたい。
俺は、神に背く行為をしたが・・・
・・・どうしても、ミニョの為に、やってやりたい。ちゃんと、契りを結びたい。
・・・お願いします。」
「・・・テギョンさん」
テギョンが、深々と、ジェヒョンに頭を下げる。
「・・・わかりました。
少し、準備が必要ですね。
お待ちください。」
夜の帳が下りた教会は、昼間と違い、神秘的な姿をみせた。
燭台に置かれた蝋燭は揺らめき、月明かりが、ステンドグラスを照らす。
厳かな雰囲気の中、ふたりは、神父 ジェヒョンの言葉に耳を傾けた。
「・・・それでは、
テギョン、花嫁に誓いのキスを・・・」
涙ぐむミニョに、テギョンは、『愛してる』と微笑みながら囁くと、キスをした。
「・・・ミニョ」
「・・・テギョンさん」
式が終わり、真っ暗な部屋に戻ると、ふたりは、どちらともなく抱き合い、口づけを交わし、肌を重ね合わせ、時間を忘れ、深く愛し合った。
身重なミニョを気遣いながらも、テギョンは、柔らかな肌に、鮮やかな薄紅色の刻印を刻み付け、惜しみなく愛を注ぎ込み、ミニョも、甘えるように、テギョンにすがりつき、身を委ね、甘く、艶やかな啼き声をあげた。
そして、日が巡り、ミニョは、臨月を迎えていた。
★★★★