番外編
『fate』if…
*1*

T side

ホテルに着き、車を停め、シートベルトを外し、降りようとするが、ミニョは、、座ったまま、車から出ようとしなかった。
仕方なく、運転席に座りなおす。

「…ミニョ」

声を掛けるが、ミニョは、ずっと、俯いたまま、顔を合わせようともしない。

それは、思いたくもなかったが、拒否されているように思えた。

「ミニョ…」

「……ご結婚されたんですよね。おめでとうございます。」

ミニョは、俯いたまま、蚊の鳴くような小さな声で、告げる。

突然、言われ、疑問符が、頭に浮かび上がる。

"ヒジュとのことを言ってるのか…?"
"婚約が破棄したことを知らないままなのか…?"

「結婚はしてない。ヒジュとの婚約は、ずっと前に、破棄になったんだ。」

「嘘…」
小さな声で、呟いているミニョ。

"やっぱり、ずっと、誤解したままだったんだな…"

「ミニョ…会いたかった。ずっと、ずっと…会いたかった…。ミニョ…お前だけだ…。お前だけを、今でも、ずっと、愛してる。」

自分の今の気持ちを、素直に打ち明け、微笑みながら、ミニョの頬に、そっと、手で触れてみる。
触れた頬が、ひんやりと冷たい。
ミニョが、すぐに、そっぽを向いてしまい、触れていた手が、外れてしまう。

「ミニョ…」

振り払われてしまったことに、吃驚しながら、ミニョを見ると、身体を震わせ、首を、しきりに横に振っている。

「…ごめんなさい。…ごめんなさい。」

「何で、謝る…?謝らないといけないのは、オレの方なんだ。お前を…」

「ごめんなさい・・・。

私・・・実は・・・テギョンさんの・・・子どもを・・・産みました・・・。
今、7歳になります・・・。
勝手に、産んで、ごめんなさい・・・。
でも・・・テギョンさんには・・・絶対に・・・迷惑を・・・かけたりしませんから・・・。
大丈夫ですから・・・
どうか・・・
心配しないでください・・・。」

自分の声に被さるように、突然、告げられた、自分の知らない事実。

背中を折り曲げ、顔を覆うミニョの手が小刻みに震えている。

そのミニョの姿が、あまりにも儚すぎて、今にも、消えそうだった。

「ミニョ・・・」

ついさっき会ったばかりのミニョが、目の前から消えてしまうのではないかと、恐怖に怯え、咄嗟に、その身体に、手を伸ばし、抱き締める。
驚いたように、強張らせるミニョの身体に、自分も驚いた。

こんなにも、冷たかっただろうか・・

こんなにも、痩せ細っていただろうか・・・

こんなにも、小さかっただろうか・・・

その痩せ細った小さな身体が、目に見えない、ミニョの7年間の苦労を物語っていた。



★★★★

「fate」の番外編『if…』はじめましたが・・・
う…ん、自分が、想像した以上に、難しいですねぇ…(;゜∀゜)
こんな感じで、皆様、よろしいでしょうか・・・(゜゜;)(。。;)(゜゜;)(。。;)
皆様の反応が、ちょっと、いや、かなり不安・・・。

「fate」本編では、ふたりが語り手だったので、そのままで、やっています。次回は、ミニョ編です。