「今宵、月明かりの下で…」15
「夢見」
薄桃色の布で仕切られた部屋の向こうに、うっすらと、ミニョの姿が見える。
『テギョン様、どうぞ、お入りになって。』
テギョンは、目隠し代わりの薄桃色の布を剥ぐと、一糸纏わず、テギョンに、白い背中を向けているミニョの姿。
『・・・ミニョ』
ミニョに声を掛けると、恥じらうように、丸み帯びた柔らかな胸を潰すように腕で隠し、頬を紅く染めながら、ミニョがテギョンを見つめている。
テギョンは堪らず、ミニョに近付くと、胸を隠しているミニョの腕を掴む。
ミニョのふっくらとした柔らかそうな胸が、テギョンの目の前に晒され、触れようと手を伸ばした・・・
・・・・ が
いくら触れても、柔らかな感触が伝わってこない。テギョンが、唇を尖らしながら、首を傾げる。
今度は、ミニョを抱いてみようと抱き締めてみる。
すぐに、自分の胸に縋るように、白い手が衣服を掴む。
唇に口づけをしようと、そっと、顎を上げ、顔を見つめたとき、うっとりと目を閉じていたのは、ミニョではなく、婚約者ヘイの姿だった。
『・・・テギョン様』
甘ったるい声で、テギョンにしなだれかかるヘイのしどけない姿に驚き、ハッとしたように、テギョンは、『夢』から目が醒めた。
汗の粒が、首筋や背中に流れ落ちている。
テギョンは起き上がって、キョロキョロと辺りを見回した。
そこは、見慣れたいつもの寄宿舎で、ヘイの姿は、もちろん、ミニョの姿はなかった。
テギョンのそばにあったのは、床に投げつけた艶本だった。
「チッ・・・その本のせいか・・・おかげで、妙に、生々しい夢を見てしまった・・・」
はぁ~と、深く息を吐き出し、テギョンは額についた汗を拭う。
ふと、夢で見た艶かしいミニョの姿を思い出す。
テギョンは、思わずゴクリと唾を呑み込む。
また、身体の中心が疼くような、熱さを感じる。
自分には、色欲など、微塵もなかったはずだ・・・。
何故だ・・・?
こんなの経験初めてだ・・・。
これは、生々しい夢を見たせいか?それとも、あの艶本のせいか?
まさか・・・
俺は・・・
ミニョのことが
『好き』
なのか・・・?
★★★★