「今宵、月明かりの下で…」8

「魅力」




口を歪ましながら、テギョンは、スッと、自分の手に重ねられたウォルファの手から手を離すと、動揺したように、部屋を出て行ってしまった。
妓楼を出て、早足で、寄宿舎に帰っていく。
テギョンは、女性に対して、本当に疎かった。許嫁の女性とすら、手を握ったこともなかったのだ。

“指先が・・冷たかった・・・でも、感触は柔らかだった。”

テギョンは、自分の手を見つめ、それから、首を横に振った。

“一体、俺は、な、何を考えてるんだ・・・?”

親が決めた許嫁はいたが、女に興味などなく、自分に触れようとする女たちを避けていた。
もちろん、妓生も苦手だった。
男に媚びる態度、身を売る卑しい行為、香のにおい、白粉のにおいは、どれも臭くて苦手だった。
なのに、あの『ウォルファ』という名の妓生は・・・
妓生らしからぬ、まだ幼さの残る顔立ちと乙女のような甘い花のような香りを漂わせているのに、客に対しての丁重な態度、艶っぽい仕草は、妓生らしい大人の姿を魅せる。

そして、美しいカヤグムの音色とウォルファの歌声は、もう一度、聴いてみたいと思った。

テギョンにとって、ウォルファは、今まで会ったことのない女性(存在)だったが、今のテギョンには、胸の奥にある歯痒い感情が何かを、まだ、知る由はなかった。

明け方になってから、シヌが寄宿舎に帰ってきた。
同室のテギョンは、シヌが帰ってくる音に目を覚ましたが、起きることはなく、シヌに背を向け、じっと目を閉じていた。
シヌの着ている衣服からは、微かに、ウォルファの残り香がしていた。

シヌの前で、一糸纏わぬ白い肌を晒したウォルファの姿が浮かび、テギョンの胸は知らずにチクリと痛んだ。


そして

成均館が休みのある日、テギョンは、許嫁から文が届き、会うことになっていた。



★★★★


『ウォルファ』の匂いのイメージの花は、金木犀ですかね。

今回、ミニョの役が『妓生』だけあって、性格や態度が、ドラマのイメージとかなり違います。
『こんな色っぽいのミニョじゃない!(`Δ´)』って思われる前に(もう、思ってますよね…)、『ごめんなさい。』と、謝っておきます。

でも、イメージ的には、最近のシネちゃんなんですよね・・・。
(゜゜;)(。。;)(゜゜;)(。。;)(゜゜;)(。。;)(゜゜;)(。。;)