美男2
~Another Story~
「Stand By Me」
*68*
「・・・んん・・・あれ・・?」
翌朝、目覚めたとき、ミニョは、見慣れない部屋にいた。
身体が重たく感じ、なんでだろうと、寝ぼけ眼のまま、横を向くと、ミニョは、目を見開き、悲鳴をあげそうになり、慌てて、手で口を塞いだ。
ミニョが驚くのも無理がない・・そこには、スヤスヤと寝息を立てて眠っているテギョンの寝顔があったのだ・・・。
降りやむことのない雨は、抱き合うふたりの身体を容赦なく濡らしていたが、濡れることも気にならないくらいに、ふたりは、お互いの体温を感じながら、幸せで満たされていた。
それでも、ミニョの衣服が濡れ、寒そうに小刻みに身体を震わせ、冷たくなっていることに、テギョンは気付き、心配になり、ミニョから身体を離すと、その手を掴み、車へと連れて行き、強引に助手席に乗せ、車を走らせた。
車は、テギョンがよく利用しているニックスホテルへと向かった。
チェックインを手早く済ませると、ミニョを連れ、部屋に向かう。
部屋に入ると、バスルームに向かい、丸いバスタブに、入浴剤を入れ、蛇口を捻り、勢いよくお湯を出す。
「先に、風呂に入れ。濡れたままだと、風邪をひく。濡れた服は、クリーニングに出すから、出せよ。」
ミニョをバスルームに押し込んだ。
一段落すると、はぁ・・・とテギョンはため息を吐くと、自分も濡れた服を脱ぎ、バスローブを羽織ると、ルームサービスで、クリーニングを頼んだ。
“・・・そう言えば、前にも、ずぶ濡れたミニョをホテルに連れてきたことがあった・・・
あのときは・・・確か・・・アイツに預けられた指輪を公園の池の中に投げ捨てた(フリした)ら、一晩中、池の中、指輪を探してたんだよな・・・”
バスルームから音が聞こえ、テギョンは、バスルームの方を見ると、ミニョが出てくる。
「お先にすみません・・・ありがとうございました。」
バスローブ姿のミニョは、恥ずかしそうに俯いている。
ミニョの濡れた長い髪からは、まだ、ポタポタと滴が落ちている。
「髪くらい、ちゃんと乾かせよ・・・」
「・・・すみません。」
口を尖らしながらもテギョンは、ドライヤーを持ってくると、ソファーを指差し、ミニョをソファーに座らせた。
テギョンは、ドライヤーのスイッチを入れ、ミニョの柔らかな髪を指で優しくすいていく。
気持ちいいのか、ミニョは、目を閉じて、テギョンにされるがままだったミニョの頭が、前後に揺れはじめていた。
「コ・ミニョ・・・?」
ミニョの返事がなく、テギョンがミニョの顔を覗き込むと、ミニョは、座ったまま眠っていた。
テギョンは、ミニョを起こすことなく、抱きかかえると、ベッドに運んだ。
無防備な寝顔は、雨の撮影後に、高熱を出したときの姿を思い出させる。
“あのときも、お前は、自分のことより、人の心配をしてたな・・・”
テギョンは、ミニョの顔にかかった髪を指で払い、柔らかな頬を愛しそうに、優しく撫でている。
「これから、ずっと、俺が、お前のそばにいて、お前のことを守ってやるから・・・だから、もう二度と、俺のそばから、離れるなよ・・・。」
テギョンは、ミニョの額にキスを落とすと、バスルームに向かった。
シャワーを浴びたテギョンは、眠そうに欠伸をした。
もうひとつベッドがあるにも関わらず、テギョンは、ミニョの寝ているベッドに潜り込み、後ろから、ミニョを抱き締める。
ふんわりと香るミニョの匂いに、テギョンは幸せそうな笑顔を見せると、そのまま、眠りに落ちたのだった。
“・・・昨日、全然、寝てなくて・・・お風呂入っているうちに温かくなってきてから、お風呂でウトウトしちゃって、そのあと、テギョンさんに、髪を乾かしてもらってたら、気持ちよくなって・・・きっと、そのまま、私、寝ちゃったんだ・・・
ど、どうしよう・・・”
ミニョは、手で頬を覆うと、困ったように、テギョンの寝顔を見ていた。
テギョンの瞼が微かに動き、ゆっくりと目を覚ます。
驚きで真ん丸の目のミニョと目が合うと、テギョンは、眩しそうに目を細めた。
“昨日の出来事は、夢ではなく、現実だった・・・”
「・・・おはよう」
「お、おはよう・・ございます・・・昨日は・・・あっ・・・」
顔を真っ赤にしながら謝ろうとしているミニョを、テギョンは、引き寄せ抱き締めた。
「ミニョ・・・一緒に、合宿所に帰って、また、一緒に、暮らそう・・・俺のそばから離れるな・・・もう、ひとりで、何処にも行かないでくれ・・・」
ミニョが、そばにいるだけで、胸がいっぱいに満たされていく。
今、感じている、この幸せを、手離したくない。
テギョンは、抱き締めた腕に、力を込めた。
★★★★