美男2
~Another Story~
「ウサギの目」
*64*
ミニョは、ベッドに横になっても、眠ることが出来ず、寝返りを繰り返していた。
心臓の音は落ち着かず、早鐘のように鳴り響いていて、まだ、身体は震えている。
耳には、テギョンの声が残っている。
何度、繰り返し聞いても、間違いなく、テギョンの声だった。
『・・・サランヘ』
忘れもしない、あのコンサートの日に囁かれた言葉。
『今後もずっと、この言葉を言ってやる。・・・サランヘ』
また、聞くことが出来るなんて、思いもしなかった。
枕元に、ポロポロと涙が零れ落ちる。
キュンと切なくなるくらいに胸が痛く、ギュッと、胸元を掴んだ。
寝不足の朝を迎えたミニョ。
洗面所の鏡で、自分の見ると、寝不足と泣いたせいで、目がウサギのように真っ赤だった。
身支度を整え、外に出ると、どんよりと厚い雲が空を覆い、また冷たさを増した風が吹く。
風の冷たさに、肩をすくめ、首に巻いていたスヌードを巻き直しながら、いつも通りに、朝のミサに行き、そのあと、シスターたちの手伝いをしながら、一緒に朝ごはんを食べ、ボランティア先に向かう。
「おはようございます。よろしくお願いします。」
ナースセンターに立ち寄ると、婦長が顔を出す。
「ミニョさん、おはようございます。あら?寝不足?目が真っ赤よ。」
「あっ、すみません」
「いいのよ、気にしないで。みんな、待ってますよ」
「はい、行ってきます」
プレイルームに向かうと、子どもたちが迎える。
「みんな、おはよう」
「ミニョお姉ちゃんだ!」
子どもたちが、一斉に、ミニョを囲む。
「ねえ、一緒に、本読もうよ!」
「一緒に、絵を描こうよ!」
「ねぇ、ピアノ弾いて!お歌、歌って!」
小さな手たちがミニョの手を掴み、あちらこちらに引っ張る。
「はい、はい、順番ね。」
ミニョは、困ったように、笑っている。
一緒に、本を読んだり、絵を描いたり、ピアノを弾いて、歌ったり、子どもたちと一緒に過ごす。
ボランティアの時間が終わり、名残惜しそうな子どもたちとお別れをして、いつも通りに、ファランの元に向かう。
「こんにちは、ファランさん。」
ファランの返事がなく、ベッドを見てみると寝ているようだった。
「コ・ミニョさん、こんにちは。いつも、ありがとうございます。」
「こんにちは、ハンさん。ファランさんは、寝ているみたいですね」
「はい、先ほどまで、薬を投与していたので・・・」
血の気のない白く透き通ったファランの顔を見ているミニョ。
「あまり、体調も思わしくないようなので、このまま休ませようと思いますので、それに、ミニョさんも、お休みになられた方が、目が、真っ赤ですよ。」
ハン秘書が、少しだけ笑みを見せる。
「・・・すみません。」
ミニョは、俯きながら、恥ずかしそうに、頭をかいた。
「それでは、また、来ます。」
「はい、お願いいたします」
ミニョが、頭を下げ、病室を出る。
そして、病院の外を出て、病院の近くのバス停で、ベンチに座り、バスを待つ。
何気なく、行き交う車を見ている。たまに、青い車を見かけると、胸が、キュンと痛くなる。
ミニョが、バッグから、携帯電話を取り出す。
着信履歴に残るテギョンの名前。
電話をするべき・・・?
でも、仕事だったら・・・?
もし、テギョンさんが出たら、なんて、話せばいい・・・?
どうすればいいのかわからなく、躊躇ってしまい、結局、ミニョは、バッグに携帯を仕舞ってしまう。
バスに乗り込み、ミニョが向かった先は、自宅ではなく、合宿所近くの公園だった。
テギョンの誕生日に、一緒にメンコを飛ばしたあの公園だった。
夜の公園で、子どものように、無邪気に楽しんでいた懐かしい思い出の場所。
ミニョは、懐かしいその思い出に浸りたくて、何度か、公園を訪れていたことがあった。
今にも、雨が降りそうな天気だからだろうか、子どもたちの姿もない。
ミニョは、ブランコに座ると、また、バッグから、携帯を取り出し、携帯画面を覗きこんでいると、突然、携帯が鳴り出す。
着信先は、
テギョンだった。
★★★★
えっ?(゜゜;)まだ、テギョンとミニョを会わせないのか、と・・・(゜゜;)(。。;)
も、も、もう少しだけ、あと、2話くらい・・お待ちください。
(゜゜;)(。。;)(゜゜;)(。。;)
アメンバー申請受付、もう少しだけ、待ちますので、焦らずに、どうぞ、お待ちしております。