美男2
~Another Story~

「メッセージ」
*63*


真剣なミナムをよそに、テギョンは、不機嫌そうに、口を尖らしている。

「その前に、コ・ミナム、離れろ。暑苦しい・・・」

テギョンに抱きついたまま、上目遣いで、テギョンを見つめる、ミニョと瓜二つの顔。
顔は同じだが、やっぱり、ミナムは、男だ。ミニョの小さくて柔らかな身体とは違い、身体はガタイがいいし、何より、抱き締める腕の力が強くて、痛い。

「えぇーいいじゃん。オレの胸で良ければ、貸してやるよ。ミニョが、恋しいんだろ?ほら、ミニョだと思って、抱きつけよ」

ミナムは、ニヤニヤと笑いながら、テギョンに抱きついている。
これは、テギョンを殴る代わりにした、ちょっとしたお仕置きだったが、段々、テギョンの額に、青筋が入りはじめたので、これ以上は、身の危険を感じ、ミナムは、テギョンから、身体を離した。

「で、どうしたいの?」

「ミニョに、会いたい」

「で、謝って、許しを請うつもり?で、あわよくば、ヨリを戻したいと・・・。
まあ、ミニョのことだから、ひとつ返事で許されるかもしれないけど・・・ヒョン、これだけは、覚えておいて。
好きなヤツに、自分のことを忘れられたミニョの気持ちを・・・それで、どれだけ、ミニョが深く傷ついたか・・・。
心の傷なんて、すぐには、癒えないんだ・・・。
ミニョをまた、傷つけて、泣かしたら、オレ、テギョンのこと、許さないから。今度は、本気で殴るから。
覚悟しておいて」

ミナムは、テギョンの鳩尾に、軽く拳を当てた。

「で、ミニョの居場所なんだけど、正直、実は、オレも、きちんと把握してない。ただ、アフリカに行く話は、ホント。1週間後、通知が来るって、言ってた。とりあえず、ミニョの番号だけ、教えておく。」

ミナムは、携帯を取り出し、テギョンに、ミニョの番号を伝えた。

仕事が終わり、ひとり、練習室に残っていたテギョンは、登録したミニョの番号を見つめると、通話ボタンを押した。
何度か呼び出し音が鳴るが、ミニョが出る気配はなく、そのまま、留守電に繋がった。
テギョンは、咳払いをすると、メッセージを吹き込んだ。

その頃、ミニョは、夜の祈りを捧げるため、聖堂にいた。
聖堂は、明かりもついておらず、人も、ミニョひとりだけだった。
月明かりだけが、祈りを捧げるミニョの横顔を照らしていた。

祈りを終え、ミニョは、自分の部屋に戻った。
机に置いてあった携帯が、着信があることを告げていた。
見慣れない番号に、ミニョは、首を横に傾げながら、留守電メッセージを聞いた途端、ミニョの目が大きく見開いた。

“なんで・・・?どうして・・・?”

携帯を持つ手が震える。

『・・・コ・ミニョ・・・』

忘れることの出来ない、懐かしい低音の声が、自分の名前を呼んでいた。

少しの沈黙のあと、告げられた言葉に、ミニョの目からは、涙が溢れていた。

『・・・会いたい・・・』


『・・・・・サランヘ』

ミニョは、携帯を持ったまま、泣き崩れた。




★★★★