美男2
~Another Story~

「覚悟しろよ」
*62*



大事をとって、2日間入院したテギョン。
入院中、テギョンは、どうやって、ミニョの居場所を突き止めるか、そればかり考えていた。
新しい携帯には、ミニョの電話番号を登録していなかったため、電話をすることも出来ない。
一番手っ取り早い方法は、兄のミナムに聞くことだったが・・・テギョンの性格からして、素直に、記憶が戻ったことを打ち明けることも出来ない・・・が、悠長に、他の方法を考える時間もない。
ミニョが、その間に、また、遠い場所に行ってしまうかもしれない。
もう、わずかな時間も無駄には出来なかった。

退院の日、テギョンは、アルバム製作のため、そのまま、事務所に向かう。
事務所の練習室には、すでに、メンバーが集まっていた。
メンバー各々と、個人練習をしている。

アルバムの曲を、いくつか、作詞・作曲で参加しているシヌは、ひとり、楽譜と向き合い、ギターを爪弾いていた。
時折、鉛筆を手に持ちながら、楽譜に書き入れている。
ミナムは、ヘッドホンを付けながら、キーボードを弾いて、曲のアレンジをしていた。

ただ、ひとり、休憩と表し、のんびりと呑気に休んでいる者が・・・

「テギョンヒョーン、大丈夫?倒れたんでしょ?オレ、心配したんだよ~」

テギョンの顔を見るなり、差し入れのシュークリームを食べていたジェルミが、クリームを指や口の回りに付けたまま、テギョンに抱きつこうとする。

「ジェルミ、汚い。近寄るな」

テギョンは、抱きつこうとするジェルミの額を手で押さえ、動きを制止してした。押さえつけられたジェルミは、嬉しいのか、痛いのか、顔が泣きそうに歪んでいる。

「だ、大丈夫だ、心配いらない」

咳払いをすると、口元に拳を当てながら、テギョンが素っ気なく言う。

「・・・そう、良かった。お願いだから、あんまり無理しないでよ。」

安堵の表情を浮かべ、ニッコリと笑うジェルミ。

ひとりで、差し入れのシュークリームを全て平らげようとしていたのか、テーブルには、シュークリームの包み紙の残骸がいくつも落ちているのを見つけたテギョンが、意地悪そうに口角を吊りあげた。

「ジェルミ、俺が入院中の間、しっかり練習やってたんだろうな?もし良かったら、今から確認してやろうか・・・?」

「あぁ・・・あの・・そういえば、まだ、完璧じゃないとこがあるから、練習しようかな・・・アハハ・・・ヒョン、まだ、身体が辛いんでしょ?ソファーにでも、座ってなよ・・・アハハ・・・」

愛想笑いを浮かべながら、ジェルミは、包み紙をゴミ箱に捨てると、スタスタと、ドラムセットに向かった。

テギョンは、フンと鼻で息をすると、ソファーに座り、テーブルに楽譜を広げた。
どうやって、ミナムから、ミニョの居場所を聞き出そうか、タイミングを見図りながら、楽譜の隙間から、チラチラとミナムへと視線を動かし、口を尖らし、左右に動かしながら、考えていた。
また、視線を動かしたとき、バッチリと、ミナムと視線が合ってしまい、気まずそうに、テギョンは、視線を逸らした。

「・・・テギョンヒョン、なんだよ?さっきから、気持ち悪いくらいに、チラチラと感じる視線が怖いんですけど・・・オレ、ジェルミみたいに、全然サボってないし、ちゃんと、練習してるから・・・」

「あぁ・・・わかってる」

「それとも、何?ミニョのことでも、気になるの?」

「クッ・・・」

いきなり、図星を指され、テギョンは、口を尖らし、眉間に皺を寄せた。

「マジ?まさかの、図星かよ。まさか、記憶が戻ったりとかしてないよね?」

ニヤニヤと可笑しそうに言うミナムに、苦虫を噛み潰したようなテギョンの顔に、ミナムは、ニヤリと、口角をあげた。
シヌは、小さなため息を吐くと、何も言わず、二人を静かに見ている。
まだ、状況が掴めないジェルミは、テギョンとミナムを交互に見つめている。

「ふーん、そういうこと。で、反省は?もちろん、してるよね?だって、ミニョのこと、深ーーく傷つけちゃったんだから。
・・・っていうことで、テギョンヒョン、ミニョの代わりに、一発、殴らせてよ。そうしたら、ミニョの情報をあげる。知りたいんでしょ?」

ミナムは、握りこぶしをつくる。

「えっ?えっ?ウソ?ヒョンの記憶が戻ったの?あっ、でも、それは、ダメだよ、ミナム!!」

オロオロと慌てるジェルミ。

「クッ・・・わかった。」

テギョンは、意を決し、唇を噛み締めた。

「シヌヒョーン、なんとか、してーー
!!」

ジェルミは、シヌの袖を引っ張るが、シヌは、口を出すなとでも言うように、静かに、首を横に振った。

ミナム「ジェルミ、うるさい!外野は、黙って見てろ!」

ジェルミ「だってーー(泣)」

「芸能人だし、その美しいお顔に傷を付けるわけにはいかないから、腹に力入れて、覚悟しろよ・・・。」

テギョンは、目を閉じ、腹に力を入れた。
ミナムが、握り拳を思いっきり振り上げた瞬間、ジェルミは、手で目を覆った。
テギョンは、目を丸くして、驚いていた。腹に拳が飛んでくると思ったのに、感じたのは、身体が当たる強い衝撃だった。
ミナムは、テギョンを羽交い締めするように抱き締め、ミナムは、テギョンの背中を思いっきり叩いている。

「ククク・・・ビックリした?テギョンヒョン、本気で殴られると思った?
さすがに、殴るわけないじゃん・・アハハ。ミニョにも怒られるし・・・で、マジで、記憶が戻ったの?」

「・・・あぁ、迷惑かけたな」

「そう、で、ミニョのことは、どうするつもり?」

低い声で問うミナムが、真剣な眼差しで、テギョンを見つめていた。



★★★★