美男2
~Another Story~

「覚醒」
*61*


自分でもわからない、制御出来ない思いに、テギョンは、戸惑い、苛立っていた。
多忙な日々の中での、わずかの睡眠時間。ベッドに入り、目を閉じても、ミニョが現れる。
ミニョは、青い光を感じる海底のような暗闇の中、辛そうに泣いていた。

「・・・私を、見たくないと、言いましたよね・・・私も、テギョンさんを見るのが辛いです・・・
・・・だから、見えないところに行きます・・・」

わなわなと震えながら、言葉を絞り出す哀れなミニョの姿に、どうすることも、出来ないでいる自分の姿を、テギョンは見つめていた。
ミニョに近寄ろうとすると、自分を拒絶をするように背を向けながら、ミニョが目の前から消えていく。

夢から醒めても、テギョンは、胸が締め付けられるように苦しくなり、唇を噛み締めると、腕で目を覆った。

睡眠不足と過労が重なり、テギョンは、倒れてしまう。
静寂な病室の中で、テギョンは、深い眠りに落ちていた。

暗闇の中、ぼんやりと空を見上げると、月だけが見える。

「・・・ヒョンニムに見える唯一の星は、月なんですね」

・・・あぁ、横に座ってる、この声は、コ・ミナムだな。
お前、何も知らないんだな・・・

「月は、星じゃない。太陽の光を反射させてるだけだ。太陽みたいに自分が光を放っているのが星なんだ。月は、太陽という星にくっついて光ってるだけさ」

「・・・私は、ヒョンニムという星にくっついてる月みたいなものですね」

「月だって役立つことはあるさ。俺はどんなに星が多くても、月しか見えないんだ」

「ヒョンニム、私も、今・・・
ひとつの星しか見えません。

・・・すごくステキに輝いている星があって・・・その星にばかり目がいってしまいます・・・


その星を、好きになっても
・・・・・いいですか?」

次の瞬間、月が、まるで、太陽のように、眩しいくらい光を放つ。
眩しさで、目を細めるテギョン。
横に座っていたコ・ミナムの姿は、コ・ミニョの姿になっていた。

「・・・コ・ミナム?」

「・・・はい、ヒョンニム」

何度も、“コ・ミナム”に、「ヒョンニム」と呼ばれ、事故ばかり起こして、その度に、俺は、事故処理をしていた。
最初は、腹が立って、嫌いだったのに・・・いつからか、目が離せなくなっていた。

リボン型のヘアピンをもらい喜んでいるミナムの笑顔

嬉しそうに、ブタウサギのぬいぐるみに抱きつくミナム

悲しそうな顔でブタ鼻をするミナムの写真と一枚に合わさった自分の写真

ひとつ・・・ふたつ・・・と、堰を切ったように、記憶が溢れ出していく。

掴んだときの小さな手の柔らかな感触

抱き締めたときの身体のぬくもりと匂い

テギョンが、ゆっくりと目蓋を開けると、一筋の涙が零れ落ちた。




★★★★


あああああああ・・・
やっと・・・やっと・・
ここまで・・・きた・・・
・゜・(つД`)・゜・