イケメン版

「ラプンツェル」*5*


間近にある王子の顔、唇に伝わる柔かな感触に驚いて、ミニョは、王子を突き放します。

「な、な、な、何するのですか?」

怒りなのか、恥ずかしさで、顔を真っ赤にするミニョ。
突き飛ばされた王子は、口を尖らしながら、床に強打した腰を擦っています。

「痛ッ・・・ウサギみたいに噛みつきはしなかったが、また、お前に、突き飛ばされたか・・・。はぁ・・・全く、お前は、何も知らないんだな・・・これは、“キス”というものだ・・・」

「キ、キ、キスですか?」

“なんで、コイツに、キスの説明までしないと、いけないんだ・・・”

王子は、大きな溜め息を吐くと、額に手を当てます。

「はぁ・・・」

「だ、大丈夫ですか?」

王子の顔を心配そうに窺っているミニョ。
王子は、返事の代わりに、人差し指を曲げながら、ミニョを呼びます。
ミニョは、首を傾げながらも、そろそろと、王子に近付いていきます。
王子は、近付くミニョの腕を掴むと、そのまま、ミニョの身体を引き寄せると、ぴったりと、隙間なく、抱き締めます。
王子の胸に顔を埋めるような格好に、ミニョは恥ずかしく、逃げようとしますが、身動きすることも、抜け出すことも出来ず、困ったように、目を伏せています。

「・・・イヤか?」

腕の中で、モゾモゾと動いていたミニョが、急に、おとなしくなり、王子は不安になります。

「イ、イヤじゃない・・・です」

物心がついてから、母親のファランにも抱き締められたことのなかったミニョ。
最初のうちは、慣れずに逃げたいと思っていたですが、そのうち、王子の温かな体温や耳に聞こえる胸の鼓動が、心地よく感じるようになっていました。

「・・・そうか」

嬉しそうに、ニッコリと笑う王子の笑顔に、ミニョの胸が、大きく高鳴ります。

“な、なに?なんか、いきなり、心臓に矢が刺さったみたいな感じがする・・・あれ?急に、心臓が、うるさいくらいに、ドキドキ鳴ってる・・・どうしよう・・・恥ずかしくて、このヒトの顔も、見てられないのに・・・このヒトの顔を見ていたいの?・・・”

ミニョは、顔を真っ赤にしながら、王子の顔を見つめていました。


★★★★