イケメン版
「ラプンツェル」*2*
ミニョは、成人を迎える年齢になっても、まだ、生まれて此の方、一度も、外に出たことがありません。
ミニョは、外の世界に憧れながら、ずっと、塔の上で暮らしていました。
母親のファランは、夜になると、仕事だと出掛けていき、明け方になると、塔へ帰って、自室に戻り、寝るのです。
ミニョは、ファランが寝ている間に、家事を行い、まるで、家政婦のような暮らしをしていました。
それでも、ミニョは、文句をひとつも言わず、せっせと、家事を行います。
家事をきっちりと行えば、ファランが、褒美として、外の世界のモノをくれたり、外の世界の話をしてくれるのです。
やっと、ファランが起き、食事の時間になり、ミニョは、ウキウキしながら、鼻唄を歌い、テーブルにお皿を並べます。
ファランが椅子に腰掛けると、瞳をキラキラさせながら、ファランを見つめるミニョ。
「・・・ご褒美よ。」
ファランは、その顔を鬱陶しそうな顔をしながら、テーブルの上に、一冊の本を投げます。
ミニョは、嬉しそうに、その本を胸に抱き締めます。
「ありがとう、お母様」
ミニョは、すべての家事を終え、自分の部屋に戻り、本を読みます。
前に、ファランに貰った本は、何度も読み返し、ページが擦りきれて読めなくなっていました。
「何度、読んでも素敵な本ね。やっぱり、外の世界に行きたいわ」
ミニョが、気持ち良さそうに鼻唄を歌っていると、
「ミニョ、行ってくるわよ」
ファランが、ミニョの部屋に現れます。ファランが、出かける時間です。
魔女であるファランは、魔法を使い、歳をとることなく、美しい若さを保ち、いつも、身なりを美しく整え、身体からいい香りをつけ、出掛けていきます。
「お母様、今日も、綺麗です。今度、私も、お母様みたいな香りをつけて、キレイな服を着てみたいわ。」
「何、バカなこと言ってるの?あなたは、まだ、子供なのよ!!あなたには、そんなもの、一生、必要ないわ!!」
ファランが、金切り声で怒ります。
「ごめんなさい、お母様」
ミニョは、涙をポロポロ流しながら、泣いています。
「いつまで、泣いているの?早くしてちょうだい!!」
「・・・はい・・・ごめんなさい」
ミニョは、窓から、黄金に輝く長く髪を、塔の下へと下ろします。
ファランが、ミニョの髪を身体に巻きつけ、塔の下に降りていきます。
ミニョは、涙をポロポロ流しながら、星空を見上げながら、本を読み覚えた歌を、澄んだ美しい歌声で歌います。
塔の下の緑繁る森の中では、狩りに出掛け、迷子になってしまった王子がいました。
その王子は、容姿端麗なのに、性格に少し(いや、かなり)問題があり、今日の狩りも、方向音痴で、暗闇が苦手なのにも関わらず、意地を張り、家来を付けずに、ひとりで行動をしていました。
結局、迷子になり、王子は、一緒に来た愛馬と森をさまよっていました。
王子は、なんとか、自力で、泉の近くまで、たどり着きます。
愛馬は、喉が渇いていたらしく、躊躇いなく、泉の水を飲みはじめます。
王子も喉がカラカラに渇いていたのですが、潔癖症だったせいで、「泉の水なんて、飲めるか!」と、飲まずにいました。
それでも、疲れた身体を休めるため、芝の上に座ります。
長い脚を伸ばし、地面に手をつき、上を見上げます。
夜空には、満月と、高い塔の天辺の先だけが見えました。
泉から塔まで距離はさほどないと、判断した王子は、塔に向かって歩きはじめます。
塔に近づくに連れ、澄んだ美しい歌声が聴こえてきます。
王子は、その歌声に引かれるように、塔に近付きます。
しかし、塔に着いたはいいのですが、塔にはドアがなく、王子は、途方に暮れていましたが、塔の上から吊り下がっているロープを発見します。
王子は、ロープの強度を確認すると、塔を登りはじめます。
歌っていたミニョは、ふと、髪に重さを感じ、ビックリしたように、慌てて、髪を引き揚げます。
急に、ロープが動きだし、驚いた王子から、ロープから手が滑り、地面に向かい、真っ逆さまに落ちてしまいます。
「うわっ!!」
人の叫び声が聞こえ、ミニョが塔の下を覗き込むと、人が真っ逆さまに落ちそうになっていました。
「きゃ~!!大変!!助けないと!!」
ミニョは、髪の毛を操り、落ちていく人の身体に髪を巻きつけ、上へと引き揚げます。
強い力で、上へと引き揚げられた王子は、ミニョの部屋にダイブするように窓から入っていきます。
「痛てっ!!」
身体を床に強く打ち付けられ、王子が
痛そうに声をあげ、のた打ち回っています。
ミニョは、というと、ファラン以外に初めて見る人間に、目を丸くして、驚いていました。
★★★★