美男2
~Another Story~

「ブタウサギ」
*53*


なぜ、ミナム(ミニョ)が、ブタ鼻をしていたのか、理由がわからず、テギョンは、口を尖らし、左右に動かす。
ペットボトルを持ったまま、テギョンは、楽曲製作をするため、階段を上がり、自室に向かう。
ミニョの部屋の前を通りすぎるとき、ドアが少し開いていることに気付く。
チラリと部屋を覗くと、綺麗に片付けられた部屋に、ぽつんとブタウサギのぬいぐるみだけが残されていた。

「お前、置いてきぼりにされたんだな」

テギョンが、ブタウサギの耳を掴み、持ち上げる。
よく見ると、ウサギの鼻には、ブタの鼻を綺麗に縫い付けられた跡がある。

「なんで、お前は、ブタウサギなんだ?」

首を傾げながら、テギョンが、ブタウサギを見つめる。最初に見たときから、不思議に感じていた。
なぜ、ウサギの姿をしているのに、鼻がブタ鼻なのか・・・
テギョンは、幼い頃に、大人しそうなウサギに近づいたら、指を噛まれたことを思い出した。

確かに、アイツも、ウサギみたいに、大人しそうな顔しながら、近寄ったら、危険なヤツだったよな・・・。

ウサギのように目を真っ赤にしながら、今にも泣きそうな顔で、鼻を押さえるミナムの姿

ふたつの姿が、ブタウサギと重なる。

「・・・お前は、コ・ミニョ・・・なのか・・・?じゃあ、一体、誰が、お前を作ったんだ?」

まじまじとブタウサギを見ていると、
耳に、リボンのヘアピンをつけていることに気付く。
それは、ミナムの試写会で見た、同じヘアピンだった。
少し触っただけで、ヘアピンが落ちてしまう。
ヘアピンには、何度も、接着剤で直した跡が残っていた。
壊れていて、使いものにならなくても、大事にしていたんだろう・・・
そう思うだけで、何故か、胸が苦しくなるのを感じ、ヘアピンを手の中で握りしめた。

時々、自分の感情に戸惑ってしまう。
身体が勝手に反応するときがある。
ミニョと一緒にいるとき、いつも、そうだった。
キスシーンのときも、高熱で倒れたときも、ラストシーンで、転びそうになったミニョを抱きとめたときも・・・考えるより先に、身体が動いていた。
自分は、簡単に、理性を失う人間ではない。まず、一度、よく考えてから、慎重に行動するタイプなのに・・・。
なぜ、コ・ミニョといると、俺は、おかしくなるんだ?

「お前は、俺にとって、どんな存在だったんだ?」

世界に一匹だけしかいないブタウサギを見つめながら、答えを出すことが出来ないテギョンは、悶々としたまま、口を尖らしていた。



★★★★